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中国、7割以上「知らない人は信頼しない」

 中国社会科学院・社会学研究所はこのほど、社会の人々の心理状態を研究し報告をまとめた白書(2012-13年版)を発表。調査に回答した人のうち、「社会のほとんどの人が信頼できる」と回答したひとは半数に及ばず、「知らない人を信頼できる」と回答した人は3割以下にとどまるなど、社会の信頼崩壊が一層進んでいることが明らかになった。同白書は今、中国社会で大きな反響を呼んでいる。中国青年報が報じた。

 同院の課題グループは北京や上海、鄭州市(河南省)、武漢市(湖北省)、広州市(広東省)など7都市で、約1900人を対象に調査を実施。回答者の7割以上が知らない人を「信じることができない」と回答し、人と人との間の信頼度が下降していることが明らかになったほか、商業や企業に対する信頼も低かった。また、官僚と民間、警察と民間、医療機関と患者、商業界と民間などさまざまな階級、グループ間の不信感も深刻化していた。

 宅配業者や水道検針員が来てもドアを開けるのがこわい。国勢調査は訪問制ではなく、住民が自分で居民委員会に行って報告。野菜を買う時は秤(はかり)の表示に自然と目をやり、肉を買う時はいつも手で押さえて水が出てこないか確認。スーパーで牛乳やパンを買う時、賞味期限がはっきりしないなら買わない。前回、友達の家に遊びに行ったのはいつか、隣近所の人におすそわけをしたのはいつか思い出せない。夜中にうるさい足音で起こされたのでもない限り、上の階にはどんな人が住んでいるのかにも興味がわかない。

 さまざまな不信感が一時に集中した時、社会全体のムードが「冷淡」になる。同白書は、「高齢者が倒れていても、トラブルに巻き込まれたくないとの思いから、助けてはいけないという声が高まったり、ロンドン五輪男子110m障害で最初のハードルに左足をひっかけて転倒した劉翔選手が『わざとこけた』と疑われたりしたのはいずれも、社会において『信頼』が崩壊しているから」と指摘している。

 では、なぜ社会の信頼はこれほどまでに低下してしまったのだろうか。同白書の編集長を務める、前出研究所の王俊秀・副研究員は、まず、社会革新や改革開放(1978年)以来、人々が徐々に見知らぬ人がいない社会を形成していた農村社会から出たことで、元々あった信頼構造に変化が生じたことを挙げ、「信頼の低下は自然なこと」と指摘する。また、社会革新の過程では、市場経済の秩序のほか、法律・法規も整備されておらず、法に基づいた管理がなされないため、詐欺行為が多発するのだ。

 王副研究員は、モデルチェンジの時期にある中国の社会の価値観は多元化しているとの見方を示す。社会の価値観の多元化の背後には、さまざまな社会階層や文化背景、生活環境の人々のさまざまな利益や需要、知識体系、情報接触、周囲の社会環境などが影響していると言えるだろう。ただ、それは、「価値観の共有の欠乏」という問題を浮き彫りにもしている。

 王副研究員は「制度という観点から社会の信頼に関する問題を解決することが必要」と指摘。「制度や法律、管理構造を通して、信頼に関するリスクを低下させ、社会の信頼回復のために、特に、信頼の核心部分である『公権力』から着手しなければならない」との見方を示した。(編集KN)

 「人民網日本語版」2013年2月18日

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