国の財政収支 魔のトライアングルに飲み込まれるな (2)
三つ目は赤字と債務を厳格にコントロールする必要があるとの見方だ。2008年に再び積極的な財政政策をうち出して以来、中国の財政赤字と債務規模は飛躍的に増大し、特に地方政府の債務が猛烈な勢いで増加した。都市化に後押しされて地方政府の資金調達ニーズがますます高まり、債務による資金調達は増えるばかりで一向に減ることがなかった。社会各界は政府の赤字リスクや赤字によってもたらされた債務リスクへの懸念をますます強めている。全体としてみると、中国の赤字リスクと債務リスクはコントロール可能な範囲にあるが、社会の懸念は消えない。欧州債務危機が引き起こした国の破産リスクが、財政リスクに対する国民の関心を一層高めている。地方政府の債務を解消し、国の財政リスクをコントロールすることが必要だという声がどんどん大きくなっている。
こうした3つの見方を分析すると、それぞれがよって立つ観点にはそれぞれ一定の道理がある。だが3つの見方を一緒にして系統的に考えてみようとすれば、相互の間には矛盾があり、合成するとおかしなことになる。合成するとおかしいということは、実のところ財政のトライアングルに陥るということにほかならない。
財政のトライアングルとは、財政収入、財政支出、財政赤字の3者同士の関係が幾何学的な模様を描くことをいう。作図の方法を用いれば、3者の関係は三角形になり、それぞれが1つの辺を構成する。こうした財政のトライアングルは単純なものだが、実はバミューダの魔のトライアングルと同じようにわかりにくく、気が付けばその中に飲み込まれてしまうものだ。欧州債務危機はまさに財政のトライアングルに飲み込まれた典型例だ。