景気浮揚へ15カ月予算 新政権、補正・新年度を一体化 (2)
■国債発行、最大の恐れ
補正予算の10兆円という規模は固まったが、肝心なのは中身だ。財務省幹部は「数字だけが独り歩きしている。バラマキになりかねない」と嘆く。数合わせのため、いい加減な事業が潜り込む懸念があるからだ。
財務省幹部は「自民党が批判してきた民主党のようなことにならないか」と指摘する。念頭にあるのは復興予算が被災地以外に使われていた流用問題。復興事業の額を積み上げようと詰め込んだ結果、「刑務所のショベルカーを買う」といった使い道が国会などで追及された。
とはいえ、衆院選大勝を追い風に圧力を強める自民、公明両党を前に、霞が関に対抗するすべはない。
財務、国土交通両省は公共事業をできるだけ増やす方向で調整に入った。国交省幹部は「急に耐震や防災だけを何兆円も増やせと言われても対応できない」とぼやくが、道路や橋といった防災対策や老朽化対策など各省で1兆数千億円程度を積み上げた。中小企業対策などを含めれば、5兆円程度のめどはついたとしている。
一方、大型補正予算を編成することで、新政権は財政規律の不安材料を抱えることになった。10兆円規模にすれば剰余金だけでまかなえず、国の借金はさらに増える。
民主党政権は国の新たな借金である国債発行に「年44兆円」の上限枠をはめたが、景気対策を優先する自民党からは「中長期的には守らないといけないが、短期的には弾力的に考えないといけない」(幹部)という声も出る。石破茂幹事長は17日、「超えることはありうる」と明言している。
今回の大型補正により、通年で過去最大規模の国債発行額になる公算は大きい。市場の信認を失って国債が売られることになれば、長期金利が上がって逆に景気を冷やしてしまうおそれもある。
asahi.com 2012年12月24日
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