日本勢の海外企業M&A、最多 超円高が追い風
【湯地正裕】日本企業が海外企業を合併・買収(M&A)した件数が昨年、バブル景気に沸いていた1990年を上回り、22年ぶりに過去最多をぬりかえた。国内市場が縮むなか、超円高を追い風にして海外に打って出る傾向が強まったためだ。
M&A助言会社のレコフによると、日本企業がかかわった昨年の買収案件は1848件で、前年より10%増えた。そのうち日本企業が海外企業を買収したのは515件と3割近くを占め、過去最多だった90年の463件を上回った。買収金額は前年比15%増の7兆3千億円で、06、08年に次いで3番目の水準だった。
「海外に出て生き残りを図ろうとする経営者の意欲が高まっている」(野村証券幹部)のが背景だ。昨年はおおむね円相場が1ドル=80円前後という超円高で推移し、海外企業が割安になったことが後押しした。日本銀行の金融緩和で「銀行の融資が得られやすくなり、買い手が決断しやすかった」(レコフ)ことも影響したという。
海外進出といえば、これまでは製造業や金融業が主流だったが、昨年は非製造業が主役になった。昨年の買収金額のトップは、通信会社ソフトバンクが同業の米スプリント・ネクステル社を約1兆5千億円で買収を決めた案件だった。広告会社大手の電通も、約4千億円で同業の英イージス社を買収した。
足元では1ドル=88円台まで円安が進行している。だが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の豊泉俊郎社長は「企業の成長性や継続性を考えると、海外進出といった事業構造の改革は避けられない」と、買収意欲は衰えないとみている。
一方、海外企業が国内の企業を買収したのは、前年比23%減の112件で、98年以来の低水準にとどまった。半導体大手のエルピーダメモリや電機大手シャープが海外企業からの出資を仰ぐなど、苦境の国内メーカーを海外勢が救うケースが目立った。
asahi.com 2013年1月4日
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