2010年度のノーベル物理学賞の主題ともなったグラフェン(炭素原子から構成される単層シート状構造の新材料で、グラファイトから作られる)の応用が進められている。科学者らによると、この革命的な新材料は、電子産業を新たな発展段階へと進め、少なくとも1千億元(約1兆6000億円)規模の産業チェーンを形成する見込みだ。「中国経済週刊」が伝えた。
現在発見されている世界の天然グラファイトの埋蔵量は約7100万トンあり、そのうち中国の埋蔵量は約5500万トンで77%を占めている。だが同じく世界の埋蔵量の70%以上に達し、同じく国家の戦略備蓄資源とされているレアアースと比べると、グラファイトはあまり重視されていない。中国のグラファイト産業の発展は順調ではなく、産業チェーンにおける原料供給者の位置に長期にわたって置かれている。
中国グラファイト産業協会の会長(輪番制)を務める内蒙古日新集団の張彬董事長(会長)は、中国のグラファイト産業の現状を憂慮する一人だ。張董事長によると、グラファイトは工業発展に対して、レアアースを上回る重要な意義を持つ。産業の転換とグレードアップには、国家レベルでの重視を高める必要がある。
5年前、エネルギー業界で長年活躍していた張氏は、51億元という巨額をグラファイトの精密加工に投資した。同氏の日新集団はその後、グラファイト業界で中国トップ、世界2位の規模に拡大してきた。
グラフェンはその特殊な構造により、耐高温性や熱衝撃耐性、電導性、潤滑性、化学的安定性、可塑性など多くの特性を持ち、その応用範囲は幅広い。軍事工業や近代工業、ハイテク先端技術の発展に欠かせない重要な戦略資源でもある。「20世紀がシリコンの世紀だとすれば、21世紀はグラファイトの世紀だ」と予言する専門家がいる。
▽低価格の原料輸出、高価な製品輸入
中国のグラファイト輸出価格は1トン当たり3000元(約4万8000円)から4000元(約6万4000円)の水準が続いているが、国外で加工・精錬したものを中国が輸入した場合、1トン当たりの価格はいっきに10万元(約160万円)から20万元(約320万円)へと跳ね上がる。