「1ベルト、1ロード」戦略はどのように進んでいくのか。概括すれば、それは「復興―あまねく広がる―革新」の三部曲だ。(文:王義桅・中国人民大学国際問題研究所所長、重陽金融研究院シニア・フェロー。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
まず、シルクロード文明の復興だ。古代の陸海のシルクロードは東洋と西方を結ぶ中国の「国道」であり、中国、インド、ギリシャの3つの文明の合流する懸け橋でもあった。人、文化、社会の交流プラットフォームであるシルクロードにおいて、様々な民族、様々な人種、様々な宗教、様々な文化が合流し、融合し、長年の交流の過程において各国は「団結・相互信頼、平等・互恵、あまねく広がる・相互参考、協力・ウィンウィン、異なる人種、異なる信仰、異なる文化的背景の国々による平和の共同享受、共同発展」というシルクロード精神を形成した。今や「1ベルト、1ロード」がグローバル化時代においてシルクロード精神を復興しつつある。
次に、グローバル化のさらに「あまねく広がる」方向への発展を後押しする。伝統的なグローバル化は海から始まり、沿海地区、海洋国家が先に発展し始め、陸上国家は後れを取り、大きな貧富の格差を形成した。伝統的なグローバル化は欧州が切り開き、米国が大いに発揚し、国際秩序の「西洋中心論」を形成し、東洋が西洋に従属し、農村が都市に従属するといった一連の結果を招いた。今や「1ベルト、1ロード」が世界のリバランスを後押ししつつある。「1ベルト、1ロード」は西への開放を奨励し、西部開発および中央アジア諸国、モンゴルなど内陸国家の開発を先導し、グローバル化のあまねく広がる発展の理念を国際社会に行き渡らせる。同時に、「1ベルト、1ロード」は自らの質の高い生産能力と比較優位産業を主導的に西へと広げる中国の戦略であり、沿線国、沿岸国にまず利益をもたらすとともに、中央アジアなどシルクロード沿線地帯が東西貿易、文化交流の通路に過ぎず発展しなかったという歴史的状況も変える。これは欧州式グローバル化がもたらした貧富の格差、発展の地域間不均衡を乗り越え、平和が永続し、共同繁栄する世界の構築を後押しするものだ。
最後に、人類文明を革新し、協力の新理念を探る。「経済ベルト」という概念自体が地域経済協力モデルの革新であり、このうち中国・ロシア・モンゴル経済回廊、新ユーラシア大陸ブリッジ、中国―中央アジア経済ベルト、バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊などは、経済成長軸によって周辺に波及し、伝統的な開発経済学の理念を超越するものだ。中国は世界最大の貿易国だが、非同盟政策を遂行し、海洋の覇者である米国との新型の大国関係の構築を打ち出している。中国は21世紀の海洋協力の新理念も打ち出し、水上運輸、物流、安全協力モデルの革新を主張し、港湾の共同建設・享受などの方法を通じて、海上と陸上のシルクロードの連結を進めている。「21世紀の海のシルクロード」の重要な点は「21世紀」にある。これは中国が海洋への拡張、衝突、植民地支配というかつての西側列強の道を歩まず、米国の海洋覇権との対抗というよからぬ道も歩まず、伝統的グローバル化のリスクを効果的に回避し、調和的共生、持続可能な発展という新型の海洋文明を切り開こうとすることを示している。