仏香閣からの昆明湖の眺め この日は曇りで靄がかかったような天気
2014年7月現在中国では47のユネスコの世界遺産が登録されている。このうち北京には、全長6000kmにも及ぶ人類史上最大の建造物「万里の長城」や世界最大の宮殿「故宮博物館」、中国最大の祭祀建造物「天壇公園」など、スケールの大きな6つの世界遺産がある。中でも、杭州・西湖の風景をもとに造られた皇室の庭園「頤和園」は、中国文化の粋を感じられる優美な庭園として地元の人々から愛されている。
清の6代皇帝・乾隆帝が母の還暦を祝って1750年に造園を着手、1764年に完成したという頤和園は、東京ドーム62個分、皇居の2倍以上にあたる約290万㎡の広さを誇る。そのうちの4分の3は人工湖で、隅々まで回ろうとすると1日がかりとなる。
この頤和園を「北京のお気に入り」として推薦してくれたのは、建築家の梶ヶ谷友希さん(35)だ。
――初めて訪れたのは北京に移り住んで3カ月目の11月でした。その日は、天気が良く、空気も澄んで、景色も全部見渡せて、氷が張った湖では鴨たちが遊んでいました。その光景を見て、なんだかすごく癒されて、季節が変わるごとに来てみたいなと思いました。
実は、北京に来てからそれまで、北京の観光地にも、中心地にも行ったことがなかったんです。当時住んでいたのは東3環路から4環路の間だったのですが、私にはどこか殺風景というか、スケールが大きすぎて歩いていても面白く感じられませんでした。つい、それまで住んでいたオーストラリアのほうが良かったななんて思ったりして。そんな時に頤和園を訪れて、北京にもこんなに文化と歴史を感じられる美しい場所があるんだ、これなら好きになれるかもしれないと思ったのを覚えています。
頤和園は、自然が豊かで、広大な敷地の中にも起伏があり、静かなところも、賑やかなところもある。下から高台に上がって行くと寺院があって、そこから下を眺めると大きな湖の風景が見える。下を降りていくと回廊があって、そこでゲームをしている人がいたり、色んな庶民の光景が見れるんです。その景色の変化がすごくドラマチックだなと思いました。