大連で開催された第9回夏季ダボス会議で、李克強総理は特別挨拶を行い、「中国は年内に人民元国際決済システム(CIPS)の稼働を開始する」と述べた。つまり、2011年に始まった人民元国際決済システムの構築がまもなく完了し、全ての技術的障害がすでに克服され、このシステムを構築すべきかどうかの議論に完全に決着がつくことになる。これは、何を意味するのだろうか?(文:梅新育・商務部研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
この金融インフラの機能は、人民元の国際化推進だ。一般的に、通貨切り下げ競争と激しい為替変動は、通貨の国際化を妨げる大きな要因となる。ゆえに、年内に人民元国際決済システムを開始すると発表したこと自体が、中国の意思決定層の、人民元相場の安定を保証できるという自信、中国経済と人民元相場の一時的な動揺を克服できるという自信を示している。
この自信には根拠がないわけではない。▽中国が大国の中でも比較的良い経済ファンダメンタルズを持つこと▽約4兆ドルの外貨準備が中国に為替相場の安定を保つ力を与えたこと▽中国が異常な資本流出をコントロールする能力を持つこと▽その他の主要エコノミーと中央銀行も、積極的に中国と協力する内在的な動機を持つことなどを背景にしている。
資本の流出の目的は、リスクヘッジと裁定取引だ。規模の小さい経済体であれば、資本流出の量がドル相場と米国資産価格に根本的な影響を与えるほどでなくとも、同国の為替相場の大幅な下落につながる。しかし、中国経済と金融資産規模は膨大な規模を誇るため、人民元の大幅下落を招くほどの大規模な資本流出は、ドル相場と米国資産価格を大幅に引き上げるのに十分であり、その結果、資本流出・ドル買いが割に合わないどころか逆にリスクが高まる。米国の実体経済と金融市場にも破滅的な混乱が招かれる。