2015年7月2日  
 

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安保法案審議、想定される3つのシナリオ

「週刊!深読み『ニッポン』」第80回

人民網日本語版 2015年07月02日09:50

週刊!深読み『ニッポン』

 日本の政界ではここ数日、安保法案をめぐって与野党の激しい攻防戦が繰り広げられている。一方には与党・自民党、もう一方には民主党を初めとする各野党が陣取り、双方は互いに非難し、譲ろうとしない。焦点は唯一つ、集団的自衛権の行使にかかわる安保関連法案を今国会会期中に成立できるかにある。安倍首相率いる自民党は、安保関連法案を一気に成立させ、集団的自衛権の自由な行使を可能とし、日本の軍事大国化に必要な国内の法的基盤を整えることを目論んでいる。一方の野党は、安倍内閣の暴走を食い止めるため、安保法案の採決をできるだけ遅らせようとしている。安保法案をめぐって与野党各勢力が激しい論争を展開する中、安倍首相は法案成立のための国会会期の大幅延長に踏み切った。強引なこの手法には様々な非難が上がっているが、安倍首相にとっては最後の一手となる。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所副研究員)

 与野党は激しい論争を繰り広げているが、日本と世界の世論が注目しているのは、安倍首相が進める安保法案の審議がいかなる結末を迎え、いかなる方向に進むかである。日本の今後しばらくの戦略方向にかかわる極めて重要な問題となる。以下では、筆者の予想するいくつかのシナリオについて検討する。

▽第1のシナリオ:与党による一方的な法案成立

 安倍首相にとって最も理想的なシナリオは、野党のボイコットにもかかわらず、安保法案が9月末の国会会期中にスムーズに成立することである。そうなれば安倍首相が夢見る集団的自衛権行使が可能となり、日本は軍拡と戦争準備の道を歩めるようになる。日本の与野党とアジア太平洋地域など国際社会にとっては、それぞれの明暗の分かれるシナリオともなる。安倍首相にとっては、外祖父・岸信介の期待に応えて「鉄腕首相」となるための歴史的な成果となる。日本の野党や国民、国際社会にとっては、極めて大きな危険をはらむシナリオとなる。「不戦の力」を失った日本は、軍事力を総動員して米国に追随し、地球上のいかなる場所にも赴かなければならなくなる。野党は力のなさを露呈する。日本国民にとっては、子どもや孫が徴兵を受けて戦場に赴き、流血や負傷の危険にさらされる可能性が生まれる。第2次大戦の侵略の歴史を徹底的に反省することができないばかりか、これを美化しごまかし続ける国の軍拡は、国際社会にとっては悩みの種となる。

▽第2のシナリオ:与野党が譲歩しての法案成立

 与野党と各政治勢力が裏工作を含めた活発な駆け引きを繰り広げ、双方が譲歩する形で安保法案が成立するというシナリオ。野党が安保法案に制限条項を加え、集団的自衛権の行使に歯止めをかけることに成功する。野党(最大野党である民主党は特に頑張る必要がある)は脇役に追いやられることなく、野党としての健全な役割を発揮する。安倍首相率いる自民党内にも集団的自衛権行使に慎重な人は少なくない。連立与党の一端を担う公明党も集団的自衛権については独自の見方を持っている。自民党内と連立与党の結束力を確保し、「横暴」や「独裁」といったマイナスイメージを与えないため、安倍首相が各者の利益を比較判断し、安保法案の一部の条項に決定的な修正を加えることは十分に考えられる。一方では野党の理解を取り付け、もう一方では党内慎重派や連立相手の公明党に譲歩し、安倍陣営への支持とその力を高めるためである。そのためには与野党と各政治勢力が妥協しなければならないが、妥協するということは、それぞれに不満が残るということでもある。誰にとっても理想的とは言えないこのシナリオだが、安全保障面での安倍首相の暴走に必要とあればブレーキがかけられるというメリットがある。安保法案はこの場合、集団的自衛権の行使に一定の制限を加えるという前提下で採択される。野党の力を示すため、民主党を初めとする各野党は、集団的自衛権行使にかかわる今後の行動において、安倍首相を牽制する役割を担うこととなる。このような牽制は日本の庶民にとってはプラスに働き、軍事大国への日本の歩みを制約するものとなる。


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