吉林大学は20日、同校の陳啓軍教授が率いるチームが、悪性マラリア原虫の宿主天然免疫からの逃避メカニズムの研究で重要な進展を実現し、マラリアワクチンの開発に新たな抗原候補を提供したと発表した。関連する研究成果は、世界的に有名な学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。新華社が伝えた。
天然免疫反応は、有機体が病原からの攻撃に抵抗するための1つ目の防衛ラインだ。好中性顆粒球(マクロファージを含む)は活性化後、能動的な死亡という手段により、染色質と細胞質内のリゾソーム粒子を細胞外に放出し、網状構造を形成することで、病原微生物を捕獲し死滅させる。この網状構造は、「Neutrophil Extracellular Traps(NETs)」と命名された。しかし、マラリア原虫が人体の先天性免疫から逃避するメカニズムは、長年に渡り解明されていなかった。
研究によると、すべてのマラリア原虫の遺伝子には、ボツリヌス菌にコーディングが似た、「TatD-like DNase(TD)」と呼ばれるタンパク質がある。TDの表現と虫体の発症力は、直接関連している。発症力の強い虫体が示すTD量は、発症力の弱い虫体を大幅に上回る。TDのないマラリア原虫は、マクロファージと好中性顆粒球を誘導し、大量のNETsを生む。野生型マラリア原虫はTDを虫体の外部に分泌することで、宿主の免疫系に抵抗する。これには、食細胞の趨化を防ぎ、マクロファージが放出するNETsに抵抗する機能が含まれると見られる。
研究者はまた、遺伝子組み換えTD免疫を経たマウスは、マラリア原虫の感染に対して大きな抵抗力をつけることを発見した。この研究はTDがマラリア原虫の発症に関連するタンパク質であり、虫体が人体の先天性免疫から逃れる作用を引き起こすことを初めて明らかにした。これはマラリア原虫が免疫から逃れるメカニズムの解明に対して重要な意義を持ち、マラリアワクチンの開発に新たな抗原候補を提供した。
陳教授は長年に渡り、人と動物の感染症の研究に従事してきた。特にマラリアと住血吸虫病の分子病理学、病原の免疫逃れと発症の機構などで、一連の革新的な研究成果を手にしている。陳教授は2015年、スウェーデン・ノーベル委員会に招聘され、成果を審査する専門家になった。陳教授の同研究は、国家自然科学基金重点プロジェクト、重点海外協力プロジェクトの資金援助を受けており、吉林大学、中国医科大学、復旦大学、スウェーデン・カロリンスカ研究所、瀋陽農業大学と協力し行われた。(編集YF)
「人民網日本語版」2016年5月23日