フィリピンの総選挙は9日に投開票が行われた。今回の選挙では次期大統領、副大統領、下院議員286人、上院議員12人、および地方行政官が選出される。最も注目されるのは大統領ポストをめぐる競争をおいて他にない。現時点で発表された開票状況では、ダバオ市のロドリゴ・ドゥテルテ市長の当選がすでに確実なようだ。(華益声・国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
メディアはドゥテルテ氏の業績、執政理念、強硬な個性、さらには私生活に焦点を合わせると同時に、今後の外交政策の行方にも大きな関心を寄せている。西側メディアはドゥテルテ氏の対中姿勢や南中国海問題に対する見解を特に気にしている。ドゥテルテ氏はかつて南中国海紛争について、国際仲裁による解決に反対を表明したかと思えば、仲裁を「完全に支持する」とも公言した。中国との「開戦」に反対したかと思えば、黄岩島(スカボロー礁)事件で十分に強硬でないとアキノ政権を非難した。米日豪および他の領有権主張国による多国間交渉によって南中国海をめぐる争いを解決する考えも示した。
南中国海をめぐりぶれているように見えるドゥテルテ氏の姿勢表明は、南中国海問題に対する認識不足の反映だ。ドゥテルテ氏はすでにフィリピン世論の影響を受けている。アキノ大統領は在任中、「中国の脅威」を悪意をもって誇張することで、南中国海問題で中国の譲れぬ一線に挑戦し続ける自らの言動の支えとした。少なからぬフィリピン国民がミスリードされ、中国に対してネガティブな感情を抱いている。ドゥテルテ氏は市長であり、国の外交には直接関わっておらず、南中国海問題についても系統的、全面的な認識を欠いている。
現時点で、ドゥテルテ氏が仲裁を否定するのが困難なのは明らかだ。アキノ政権が一方的に申し立てた南中国海仲裁裁判は近く結果が発表される。フィリピンは判決が自らの訴えに沿い、自らの利益と領有権主張上の必要性に資するものとなることを期待している。こうした中、どの大統領候補であれ仲裁に対して明確に「ノー」と言えば、対立候補から批判され、支持率に影響が出る恐れがある。
選挙情勢が次第に明らかになるにつれ、各方面は次期大統領任期中の両国関係の行方および南中国海をめぐる争いの動きについての中国の判断に同様に関心を寄せている。中国外交部(外務省)報道官は10日の記者会見で、こうした質問を3回受けた。