中国人民銀行(中央銀行)の陳雨露副総裁は29日に行われた2016年第5回金融フォーラムで、「当面の中国の金融政策の調整とマクロ金融管理は新たな要求に直面しており、金融分野には注目すべき3つの問題がある」と述べ、マネーサプライ(現金供給量)とレバレッジの問題、金融産業の急速な発展と実体経済へのサービス提供能力の問題、現代型金融業の発展情勢と有効な監督管理の問題を挙げた。新華社が伝えた。
陳副総裁は、「目下、中国のマネーサプライと人民元建て貸出の伸びは名目GDP(国内総生産)の伸びを上回り、15年末には非金融企業のレバレッジ率が160%前後の高水準に達したが、比較的速い貸出の伸びと高いレバレッジ率と同時に存在するのは、社会各方面でさらなる金融緩和政策を求める声が絶えず上がるという状況だ」と述べた。
データをみると、16年4月末現在、広義マネーサプライ(M2)残高は144兆5200億元(約2436兆7740億円)に上り、前年同期比12.8%増加した。金融機関の人民元建て貸出残高は99兆1200億元(1671兆2776億円)に上り、同14.4%増加した。
ここ数年、中国金融産業は急速に発展し、新しいタイプの金融商品、金融機関、金融業態が次々誕生している。陳副総裁は、「金融産業の急速な発展と同時に存在するのは、企業の資金調達の難しさ、資金調達コストの高さといった問題で、どの地域にもどの産業にも程度の違いこそあれ存在する。技術の革新と産業の革新、小規模・零細企業、三農(農民、農村、農業)向け金融サービス、特に貧困地域での金融サービスは、引き続き金融産業の発展を制約する弱点だ」と述べた。
陳副総裁の見方では、「中国の現行の監督管理の枠組には当面の金融産業の発展にふさわしくない体制的な問題が存在する。一方で中国金融産業はすでに多様な金融機関システムと複雑な金融商品システムを構築している。また一方で金融の安定に影響する要因が増加を続けており、金融機関の信用リスク問題が次々明らかになり、民間の貸出とインターネットが累加するリスクが次々に出現している。株式市場、債券市場、外国為替市場など各市場が相互に連動し問題が伝染しあう状況が進行している」という。
また陳副総裁は、「3つの問題を方向性として出発すれば、中国金融産業改革の着眼点は現代型金融システムを構築し、供給側の構造改革を推進することにある。マクロ的視点でみると、実体経済の発展にサービスを提供する金融の革新を支援・奨励し、金融資源の配置の効率を高める必要がある。マクロ的視点でみると、金融政策のシステムと金融監督管理の枠組をさらに改革・改良し、監督管理の空白と規制のアービトラージを解消する必要がある。発生する可能性のあるシステム的・地域的な金融リスク要因については、慎重なマクロ管理の枠組に迅速に組み込み、適切な監督コントロールを行わなければならない」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年5月30日