アップルが先週末、配車サイト・アプリケーションを手がける中国のインターネットベンチャー企業・滴滴出行に10億ドル(約1100億円)を出資したことが明らかになると、市場は強い関心を示した。ここ2日の間には、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が北京を訪れ、今回の投資を盛んにアピールした。投資分野でこれまでずっと慎重だったアップルが、生まれて間もないネットベンチャーに投資するのはなぜか。米国にも同様のサービスを手がけるウーバーがあるのに、わざわざ遠い中国の滴滴を選んだのはなぜか。「人民日報」海外版が伝えた。
こうした問いへの答は、アップル社の携帯電話の今年第1四半期(1-3月)の中国における業績をみれば明らかだ。まず中華圏全体で営業収入が前年同期比26%減少したことがある。アップル携帯電話はこれまでずっと中国での営業収入が総営業収入の25%前後を占めてきたが、今年1~3月は10数年ぶりの減少となった。より重要な要因として、中国スマートフォン市場の全体的な環境の影響により、アップル製品が今後もこれまでのような爆発的な売り上げを維持するのが難しくなってきたことが挙げられる。アップルは一体どうやって中国市場のシェアを維持しようとするだろうか。
中国では「インターネットプラス」の影響で、モバイルインターネットの関連産業が急速に発展しつつある。滴滴を代表とするモバイル配車市場、楽視や百度を代表とするネット配車市場は、いずれも中国経済の次の投資先になりうる人口知能や自動運転などの分野を見据えており、最近は革新が足りないと批判されがちなアップルもこの分野を重視しているとみられる。
クックCEOはこのたびの投資の理由に言及した際、「滴滴の1日あたりの中国での受注件数は1100万件を超え、3億人にサービスを提供している。これだけの取引をさばくのに22日しかかかっていない」と述べた。ここには2つの意味が含まれている。1つはアップルが今回の投資を通じて、滴滴が積み上げてきた億単位の固定利用客や中国で人気がある地図アプリなどの実際のメリットを享受できるようになること。もう1つは中国でさまざまな事業の地ならしをしようとしていることだ。