朝鮮の最高指導者・金正恩氏と米国のトランプ大統領が12日の会談に向けて、10日に相前後してシンガポールに到着した。専門家は、会談は朝鮮半島情勢に緩和が生じた中での前向きな選択であり、朝米間には中心議題において依然一定の溝があるものの、双方は向き合って進み、互いの懸念の対話と協議を通じた解決に引き続き尽力する必要があると指摘する。中国新聞網が伝えた。
■朝鮮半島情勢の「氷を砕き」、朝米が連動
朝韓関係は今年初めの平昌冬季五輪での連動を契機に緩和が続いている。これに続き、トランプ大統領は朝鮮半島の恒久的非核化実現を協議するため金氏と会うことに同意し、朝鮮半島情勢に前向きなシグナルが見られた。
中国国際問題研究院国際戦略研究所の蘇暁暉副所長の分析によると、朝米首脳会談には推進要因がいくつかあった。
まず、トランプ大統領就任後、朝鮮に対する米国の全体的判断に変化が生じた。これまでの、朝鮮の政権は内在的問題によって自壊するとの予測は誤りであることが事実によって証明された。
第2に、米国は朝鮮に対する目標も調整しつつある。オバマ政権時の米国の対朝目標は「政権交代」だったが、トランプ大統領は朝鮮の政権を標的とせず、「非核化」が核心的目標であることを繰り返し表明している。トランプ大統領には独特のスタイルと決断もあり、自らのやり方で双方関係の発展を推し進めた。これも会談の実現にこぎつけた重要な原因だ。
もう1つの重要な要因が、朝鮮の戦略的重心の変化だ。現在朝鮮は国内経済の発展に尽力しており、自らの安全の確保を必要としている。朝鮮のこうした政策的変化と上記要因が朝米会談というチャンスの形成を促し、テーブルにつく機会を双方に与えた。
■会談の焦点は非核化 溝を一朝一夕で埋めるのは困難
金氏とトランプ大統領は現地時間10日、相前後してシンガポール到着した。現時点で朝米双方は会談内容を明確にしていない。
アナリストの分析によると、朝鮮半島の非核化が会談の焦点となることは間違いないが、双方間に最大の溝があるのもこの問題だ。朝米双方の代表団はすでにこの議題について協議と調整を重ねてきた。
中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の王俊生副研究員によると、米国の交渉目標は朝鮮の「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」だ。この過程において、朝鮮は核施設と核兵器の公開に協力し、国際社会による核査察を受け入れる必要がある。一方朝鮮にとっては、非核化の重点は新たな核実験をしないことであり、現在保有する核については放棄の決意をまだ固めていない。
次に、非核化のタイムテーブルだ。米国は問題解決が差し迫って必要であることから、短期間での具体的な完全非核化を望んでいる。だが朝鮮側の姿勢は段階的解決であり、ペースにおける双方間の溝を埋めるのは難しいだろう。
朝鮮にとっては、自らの安全問題が会談での大きな関心事となる。これは朝鮮周辺における米軍の駐留、米韓軍事演習、朝米関係正常化などの問題に及ぶ。また、朝鮮は今年4月の朝鮮労働党第7期中央委員会第3回全体会議で、経済発展に全力を集中すると宣言した。このため対朝制裁の緩和または解除、対朝援助なども朝鮮側が議題として持ち出す可能性がある。
■溝の中でコンセンサスを図る リスクとチャンスが併存
蘇氏は、双方間にはいくつか溝があるものの、これは共通の議題を有することが前提となっており、非核化問題で具体的合意は困難との認識で外部は一致しているが、非核化の形式などの問題で方向性的なコンセンサスを得るだろうと予想する。「今回の会談は第一歩に過ぎない。トランプ大統領も一挙達成は不可能であり、今後会談を重ねる可能性に言及している」。
王氏の以前の分析によると、会談後に朝鮮が核実験やミサイル実験を再び行った場合、あるいはトランプ政権の期待する「短期間の迅速で具体的な核廃棄」に応じなかった場合、トランプ大統領は朝鮮「核廃棄」の見通しはつかないと感じる可能性が高く、武力攻撃に出る可能性が非常に高まるだろう。したがって双方共に信頼を強化し、疑念を解消する行動を取り、溝の中でコンセンサスを図り、リスクの中でチャンスを探るべきだ。(編集NA)
「人民網日本語版」2018年6月12日
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn