また、そのような背景の下、「となりのトトロ」がスタジオジプリのロゴマークやキャラクターとなった。となりのトトロは、宮崎監督の最高の「起業」パートナーと言っても過言ではないだろう。現在、三鷹の森ジブリ美術館やどんぐり共和国などを通して、世界各地のトトロファンが、その関連グッズを購入しており、スタジオジプリにとっては大きな収入源となっている。
作品をビジネスにしない宮崎駿監督
今回上映されている「となりのトトロ」の上映時間は86分。スタジオジプリは、現代化された映画館の技術に合わせて、もともとフィルムに記録されていた映画作品をデジタルデータに変換し、デジタル・リマスター版としてよみがえらせた。しかし、欧米の最新技術を駆使した映画を見慣れている中国人にとって、「となりのトトロ」を見に映画館に行くのは、その「技術」が理由ではない。
中国の映画評論家は、「『となりのトトロ』の再上映が成功した原因は、老若男女問わずに誰でも楽しめるアニメーション映画だから。子供はあどけないトトロの姿や自由で伸び伸びとした世界を見ることができる。大人も、子供の頃のピュアな気持ちに戻ることができる。そのような力は、時間や地域の制限を受けることはない。これも、宮崎監督の作品が何年経っても人気が衰えない原因でもある。また、ポスターや予告動画、先行上映などを通して、早くから多くの人が子供の頃の思い出を蘇らせていた」と分析する。
それでも、「となりのトトロ」の興行収入は同じく上映中の「アクアマン」には大きく及ばない。
宮崎監督は以前、「1つのシーンでいい映画かどうかが分かる。誇りを持てる作品を作り、見る人が、素晴らしいと感動できる映画を作らなければならないと」語ったことがある。
そのような価値観を持っているため、スタジオジプリは、興行収入を伸ばすために商業化された要素を加えることはしない。手描きアニメには、コストがかかり多くの精力が費やされ、制作に非常に長い時間がかかるものの、收益はそれほど伸びない。
ある中国のアニメーション映画の監督は、「宮崎監督やスタジオジプリの創作に対する考え方は、米国のアニメーション映画会社とは全く違う。後者は、どちらかと言うと、線形思考で、『トイ・ストーリー』や『カーズ』、『トランスフォーマー』などはどれも本質的には商業映画だ。両者は制作の主体が異なり、米国のアニメーション映画にも関連グッズがあるが、それと同じく興行収入も期待できる」との見方を示す。
「つまるところ宮崎監督は作品をビジネスにしていない」。これが業界関係者の宮崎監督に対する評価で、数十年、映画ファンの心の中でその作品が生き続ける理由の一つでもある。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年12月19日
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn