16日に発生した韓国・珍島沖の客船「セウォル」号沈没事故の行方不明者の家族や韓国の国民には、事件の残酷な実態が突きつけられている。「セウォル」号がバランスを失い大きく傾いた後、船上にいた300人以上の学生のほとんどが、その場での待機を求める船内放送に従ったために、沈没した船に閉じ込められてしまったのだ。一方、指示を無視した学生は救出される結果となった。新華網が報じた。
事故後、韓国メディアは、「親はどのように子供に教えればいいのか?これからも、年上の人や権威に対しては絶対に従うようにと教えるべきか?それとも、自分の判断で行動するようにと教えるべきか?」と困惑する報道をしている。
韓国紙「中央日報」の22日の報道によると、事故後、救助に駆け付けた船舶の船員達は、「「セウォル」号が沈没する前に、数隻の船舶が現場に到着し、救助の準備を整えていた。しかし、船から逃げようとする乗客の姿はほとんどなかった」と振り返っている。
「「セウォル」号」沈没当時に現場に出動したタンカー「デュラエース」のムン・イエシク船長は、「様子がおかしかった。船が45度以上も傾き、回復不能な状態だったが、海に飛び込んだ人はいなかった。珍島海上交通管制センター(VTS)の連絡を受け、我々をはじめ、いくつかの船が周囲ですぐに救助する態勢を整えていた」とし、「誰でも船から脱出すれば救助できる状況だったが、船の外に出てこないのでもどかしさを感じた」と語っている。
救助された乗客が韓国のインターネット上に投稿した、事故当時の動画を見ると、「「セウォル」号」が大きく傾いているにもかかわらず、学生らが、宿泊していた4階の客室内に静かにとどまっている様子を捉えている。同動画には、その場で動かず待つようにとする、船内放送も記録されている。
今回の事故で、ほとんどの乗客が船側の指示に従っていたことは、西洋諸国の多くのメディアも報道している。例えばロイター通信は、「年功序列、長幼の序を重んじる韓国社会では、上の者や権威に対する疑問を抱いたり、反論したりすることはない。多くの乗客が船側に完全に従い、逃げるチャンスを逸した可能性がある」と伝えた。