ボストン爆発事件の米国への影響
ボストンで痛ましい連続爆発事件が起きた。世界唯一の超大国である米国で起きたこの事件は全世界に驚きを与えた。市場参加者は事件が国際市場と国際経済の行方にもたらしうる不確定性も注視している。(文:梅新育・商務部研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
1つ確実なのは、短期的に言って、この事件による米国の生産能力と実体資産への損害は極めてわずかであり、実体経済には基本的に影響はないということだ。潜在的衝撃の主たるものは、資本市場参加者の心理・予想に影響を与え、資本市場・価格相場にも波及しうることだ。
市場参加者の予想が著しく悪化した場合、米国の不動産価格、株式市場価格の回復にとって下落材料となるはずだ。幸いここ1年近く米国経済は回復基調を固めており、右肩下がりの状況にはない。市場参加者の心理も比較的楽観的であり、びくついてはいない。この下落材料に対する反応も短期的に過度に激化はしない。
国際市場と国際経済の行方に対するこの事件の最終的影響は、犯人が何者かと米国政府の反応次第だ。
ボストン爆発事件の犯人像に対して各方面は様々な推測をしている。疑いの目は主に国際イスラムテロリスト、米国内の極右勢力、米国内のその他の過激派の3つに集中している。この他、朝鮮やシリアを疑う声もあるが、国際知識を持つ客観的な観察者からすると、これは基本的に信じられないことだ。
もし犯人が単なる米国内の過激派であった場合、国際商品市場、米国内の資産市場に対する事件の影響はすぐに消失する。だが米国内の「再工業化」などに対しては、それほど目立たないが非常に長期的な影響をもたらす可能性がある。米国の再工業化と企業誘致・資金導入は一連の重大な経済的障害に直面している。その最たるものが米国の通貨覇権そのものだ。いわゆる「オランダ病」の原理を見てみれば、この点が理解できる。歴史上、新たに発見した自然資源を大規模に開発した国のほぼ全てに、製造業の衰退という状況が出現した。1970年代以降、北海油田で巨額の収入を得た英国、ノルウェー、オランダといった先進国も、ここ数年原油輸出で莫大な収入を得ながら軽工業と伝統的重工業の衰退に苦しむロシアも、こうした苦境に陥った。これは客観的な経済法則によるものだ。原油収入は為替レートメカニズムを通じて非石油産業に打撃を与える。石油業は非石油産業を労働力争奪、資本、土地など各種生産要素の競争において劣勢に追いやるのだ。