「グレーゾーン」問題の対応と西南諸島における兵力配備の強化は密接に関連しており、安倍首相の集団的自衛権解禁の深層の目的が表れている。日本は、中国が海洋強国となるのが気に入らず、東中国海と釣魚島とその付属島嶼(日本名・尖閣諸島)の海域で中国が正常かつ合法的な権益保護のためのパトロールを行うのが気に入らず、中国が「第一列島線」を越えて西太平洋に向かうことはさらに気に入らないので、中国を大陸近海の沿岸に止めておくために万策を尽くしているのである。日本から見れば、東中国海における権益保護のための中国の海洋パトロールや、西太平洋の遠洋に入り込んだ観測や訓練は、日本の海洋利益の「侵犯」にあたる。集団的自衛権が解禁されれば、日本は、日米の主張する「南西諸島」における海洋権益の「侵犯」を口実として、海上自衛隊の艦艇や航空自衛隊の軍機を堂々と派遣し、中国艦船を追いやることができる。さらには中国の艦船と武力衝突するといった深刻な事件が発生する可能性もある。
第三に、日本による集団的自衛権の解禁は、海上におけるエネルギー輸送航路の安全保護を可能とすると同時に、インド洋や中東、アフリカ海岸に向けて軍事力を伸長し、海外における日本の軍事的影響力を拡大することを可能とする。安保法制懇の報告書には、集団的自衛権が行使される具体的な事例が6つ挙げられているが、重要な海上交通路の安全を確保するための機雷の除去がその一つとされている。海上要路の安全確保とは、海上のエネルギー輸入航路の安全確保を指している。日本は、中東のペルシャ湾からマラッカ海峡、南中国海までをエネルギーの生命線と認識しており、沿線の海上安全の確保を重視している。集団的自衛権が解禁されれば、日本は、本国または同盟国の石油タンカーの保護を理由として、大量の艦艇と部隊をインド洋海域や重要航路へと派遣し、日本の海上エネルギー輸送の安全を保護すると同時に、インド洋沿岸の国や島嶼に軍事基地を堂々と設けることができるようになる。日本はすでに、アデン湾沿岸の重要な国であるジブチに日本初の海外常設軍事基地を設けている。小野寺五典防衛相は最近、ジブチを特別訪問し、ジブチに設けられた自衛隊基地を視察した。ジブチ基地の設立は、日本が集団的自衛権を行使して海外における軍事的影響力を拡大するための試みである。
だが集団的自衛権の解禁によって日本を軍事大国としようとする安倍首相の計略は、完璧なものであるとは言えない。それどころか集団的自衛権の解禁は初めから危険をはらんでいる。集団的自衛権の解禁は、日本を戦争の深淵に引き込むものであり、「集団的自衛権」は「戦争」に等しい。東京の街頭で時折繰り広げられる民衆の反戦・護憲のデモからもそれは見て取れる。日本の一般の民衆が支持しているのは、平和発展の方針を引き続き守る政府であり、他国との武装衝突の勃発や戦争の発動へと一歩一歩進んでいく「再軍国主義化」の政府ではない。
2015年は、第2次世界大戦の終結と反ファシズム戦争の勝利の70周年となる。70年前の日本は、義のない侵略戦争の泥沼に陥り、最後は恥ずべき失敗を喫した。現在の世界の潮流は、平和や発展、協力、調和、ウィンウィン、寛容である。安倍首相の集団的自衛権解禁は、時代の潮流に逆らった動きであり、軍国主義の亡霊を呼び覚まそうとしているものである。安倍首相がもっともすべきなのは、侵略の歴史を徹底的に反省した上で、善隣友好外交を推進し、日本経済の再建と復活に専念することだろう。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所研究者)(編集MA)
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「人民網日本語版」2014年6月4日