鴻海集団の今回の動きについて、業界関係者の間では特許収入を増やすのが狙いとの見方が一般的だ。同集団はこれまでずっと営業収入源の拡大に努め、製造業以外の業務を発展させるなどして、米アップル社への依存度を引き下げてきた。というのも、2014年第1四半期(1-3月)の報告書によると、営業収入は8834億8千万台湾ドル(約2兆9875億円)に達し、前年同期の8090億台湾ドル(約2兆7356億円)を9%上回ったが、このうち約60%はアップル製品の組立業務により発生したものだったからだ。
特許収入は同集団が重視する収入源だ。子会社の富士康は世界最大の電子製品のOEM(他社ブランド製品製造)メーカーであり、技術特許を大量に保有しており、今年初めには保有する特許は6万4300件、申請中の特許は12万8400件に上ることを明らかにした。
一部の業界関係者の見方によると、ライバルをうち負かすことが同集団のもう一つの目的だという。家電アナリストの梁振鵬さんは、「東芝、船井電機、三菱電機などの企業と鴻海との間には、多かれ少なかれ業務上の関連や衝突が存在する」と話す。東芝は自社でもテレビの液晶ディスプレーやテレビを生産するし、ソニーや日立などの企業と新会社・ジャパンディスプレイを設立するということもしており、鴻海傘下の群創光電とはライバル関係にある。船井電機はもともと日本の消費電子分野で最大のOEM企業で、経営モデルや取り扱い業務が鴻海集団と非常に似通い、両社の競争関係は非常にはっきりしているという。
今回の訴訟で勝訴すれば、鴻海側にとっては間違いなく朗報だ。巨額の特許収入を得られるようになるだけでなく、ライバルに打撃を与える作用もあるからだ。
▽強みが川上の産業へ拡大
長年にわたり、液晶ディスプレーの特許をめぐって、中国企業は日韓企業に課せられたさまざまな制約に苦しんできた。今回の訴訟は、中国企業がテレビ産業の川上にある液晶ディスプレーの分野で権威を高めたことを物語る。中国家用電器商業協会営業販売委員会の洪仕斌執行会長は、中国のテレビ企業が液晶ディスプレー技術で成し遂げた飛躍を評価し、「国内の巨大なテレビ市場をよりどころとして、このような巨大な応用環境の中で、特定の応用環境を対象に一連の革新をうち出すことは、中国企業の得意技であることは間違いない」と話す。