だが公用車市場の流れなどにより、中国人消費者の多くはビジネスの場面ではA6Lの方がステイタスが高いと感じるようになった。北京大学経済学院の薛旭准教授は、「その時クラウンは誤った、自分の力量をはかり損なった位置づけを改めず、クラウンの栄光時代を長く持続させることに失敗し、販売台数は下降線をたどるようになった」と指摘する。
07年の月間販売台数は4千台前後だったが、翌年は3千台に低下し、09年は2千台を割り込んでしまった。
▽失われたクラウンを求めた 国産第13代クラウン
09年に国産の第13代クラウンが登場し、販売価格は33万6800元(約648万円)から89万9500元(約1732万円)で、引き続き高級Cクラス車市場に狙いが定められていた。車内空間をより広くし、グレード感を高め、技術をより多く盛り込んだ……。だが価格が高く、ブランド力が弱く、デザインが今ひとつであることから、この新クラウンは市場での戦いに負け、業績は惨憺たるものだった。
程なくしてクラウンの位置づけがビジネス車から若年向けへと変化した。トヨタは11年、「18歳から40歳の若い人々を対象に、店頭でクラウンに試乗すると抽選でアップル社の『iPad』が当たります」というキャンペーンをうち出した。すると子ども時代にクラウン輸入車に好感を抱き、経済力もある40代以上の潜在的な顧客層が離れていった。iPadの価格など自動車の値段に比べればたかがしれているのに、若い世代を取りこもうとするトヨタのやり方は、意識的にせよ、無意識にせよ、1960年代や70年代生まれの人々のクラウンに対する情熱を冷ましてしまい、別の高級車ブランドへさっさと乗り換えてしまうという事態を招いた。
また一汽トヨタは弾ける若さの映画スター・佟大為を第13代クラウンのイメージキャラクターに起用し、クラウンに若々しさ、躍動感、活力といった新たな魅力を加えようとした、だが古めかしい外観でオーソドックスなクラウンにはこうした新しい取り組みは不釣り合いで、やればやるほどちぐはぐな印象になり、たくさんの顧客を失ったのも当然のことだった。データによると、12年にはクラウンの売上台数が3けた減少した月が複数あり、特に12月は905台しか売れず、前年同月の3694台に比べ76%もの減少になった。
薛准教授は、「高級車、またはいわゆる『旗艦車』について、人々は品質を重視するだけでない。より重視するのはブランドだ。ブランドとは消費者の製品に対する心理的な賛同のことだ。はっきりしているのは、クラウンが先頭を行く豊田のブランド力は、より多くの富裕層消費者を動かすにはまだ不十分ということだ」と話す。(編集KS)
「人民網日本語版」2014年12月3日