最近日本の代表的な企業が大きな赤字に陥っている。シャープや松下、ソニーといったかつて世界の一流企業といわれた日本の企業の落ち込みは、底が見えない状況が続いている。これまで勢いのあるトヨタでさせ、中国市場でのシェア拡大に苦戦しており、世界トップシェアの地位を奪われかねない状況だ。原因は何か?・・・・“独創力”の欠如である。
ウォークマンからコンバータエアコンまで、かつての日本製品は創造性にあふれていた。しかし現在は、液晶パネルでは韓国製品、携帯電話ではアップルのアイフォーンが世界を席巻しているのに対し、日本製品にかつての輝きは全く見られない。日本製品が世界から注目を浴びていた頃、米国の企業は日本に学びに来ていた。そして中国、韓国、米国の企業が電子分野で力をつけていくにつれ、日本の企業は反対に勢いを失っていった。
かつての日本には、松下幸之助や盛田昭夫といった、現代のアップルの創始者スティーブ・ジョブスに勝るとも劣らない、“時代を見通す”ことのできる名経営者がいた。彼らは時代を読み、未来の成長産業を見つけ出すことができた。残念ながら現在の日本にそのような指導者は皆無だ。
日本の経営の父と言われる稲盛和夫氏も、現在そのような経営者がいないことを嘆く。かつてソニーでゲーム分野をゼロから立ち上げた久多良木健氏は、異端と見られたこともあったが、優れたリーダーとしての資質を備えていた。大切なのは技術革新を読み、新しい生産ラインを理解できる経営者であることだ。しかし現在の日本企業で出世する人は“文科系”の“世渡りのうまい人間”になってしまった。
“理科系”軽視の日本企業
日本企業の凋落の背景には、リーダーの資質不足に加え、日本人や日本全体が技術革新を軽視していることが挙げられる。ジョブス氏の有名な言葉がある。「顧客が何を欲しているのか考えているだけではだめだ。そして顧客に何を提供できるかを考えることだ。それもすぐである。顧客は君が作り始めるのを待っていてはくれない」というものだ。しかし日本企業の多くは、依然として「お客様の答えを待っている」状況だ。その点で、かつて経営の神様といわれた松下幸之助も、“待つこと”で激しい企業戦争を勝ちぬいた。かつて松下電器は“まねした電器”と同業他社に揶揄されたことがある。松下の経営の真髄は、改良であり、革新や創造ではなかった。真似はしょせん真似でしかない。