米政府はこのほど、国家安全保障戦略について報告を行った。同報告は米国のグローバルな利益や目標を総合的に論述するとともに、侵犯を阻止し、国家安全保障戦略を実行するために取るべき行動を打ち出した。安全保障政策における米国の基本的立場を反映する同報告を、国際社会は強く注視している。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
オバマ政権による国家安全保障戦略についての報告は前回2010年に続き2回目だ。両報告の中国に関する部分は、米国が軍事力の近代化を中心に中国の台頭を注視し続け、中国の発展の方向に影響を与えようとしていることを反映している。両報告を比較すると、米国の対中戦略認識には若干の変化が見られる。
第1に、米国は中米間で衝突が起きる危険性をさらに注視するようになった。前回報告では「準備を整えて」、米国とその地域およびグローバルな同盟国が中国の軍事的近代化による負の影響を受けないよう確保すると強調した。新報告では、競争は存在するものの、「両国の対立は不可避」との判断には反対すると明言した。
第2に、米国は中国との協力関係をさらに重視するようになった。前回報告は、両国が全ての問題で合意することは不可能だが、意見の相違が米中双方の共通利益分野での協力を妨げるべきではないとした。新報告は両国協力はかつてない水準に達しており、気候変動、公衆衛生、経済発展、朝鮮半島の非核化などの問題で協力を探っているとして、炭素排出削減面での成果を特に評価した。
第3に、米国は中国に対する防備を深めている。今年の報告は、「リバランス」戦略を推進する必要性を指摘。米国はアジアにおける中国の「存在の拡大」を注視しているとして、海上の安全、貿易、人権などの問題で「国際的なルールや準則を守る」よう中国に要求した。米国は東中国海や南中国海の問題を安全保障上の重要な懸念としたうえ、矛先を中国に向けた。報告は「脅しによって領土紛争を解決するいかなる方法」にも反対するとしたうえ、ASEANと「南中国海における行動規範」を早期に妥結するよう中国に圧力をかけた。