米第7艦隊のロバート・トーマス司令官はこのほど、ASEAN諸国が海洋部隊を共同構築して南中国海を巡航することを提言したうえ、第7艦隊が支援することを約束した。同司令官は1カ月余り前にも、日本が哨戒活動の範囲を南中国海まで拡大することを歓迎すると述べ、装備、訓練、作戦面でフィリピンなどを支援するよう日本の背中を押した。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
第7艦隊司令官が南中国海問題の「指揮」をしきりに執るとは、彼とその背後の米国に一体どんな意図があるのかと考えざるを得ない。
その1、米国は対中牽制のムードを高めようとしている。トーマス司令官は以前、国際法に合致せず、不必要な摩擦を引き起こすとして「九段線」を公然と非難。「中国の海軍、海警の力は近隣国を上回り、中国艦隊は依然力を強化し続けている」と強調し、中国が南中国海における地域の国々および米国の利益を損なうことへの懸念を表明した。こうした発言は南中国海問題の責任を中国に押しつけ、「アジア太平洋の平和と安定を破壊している」と中国を誹謗することで、中国の正当な権益維持活動を妨害しようとするものだ。
米国の対中防備には長い歴史がある。米国務省は以前、中国の南海艦隊が曽母暗沙(ジェームズ暗礁)を巡視し、主権を示していることについて、中国の軍事活動に対する監視を継続すると表明した。先月には米海軍が先進の偵察機「ポセイドン」を出動して南中国海で偵察パトロールを行ったことを初めて認めた。米国は中国の脅威を誇張し続けることで、南中国海での巡航行動の常態化を正当化し、さらには地域の同盟国やパートナーとの協力をさらに強化して、空と海で中国への対処能力を強化することを望んでいる。
その2、米国は目標を定めるために反応を探っている。第7艦隊司令官がどのような場で発言したのかは示唆に富む。日本の哨戒活動への支持はメディアの取材で表明したものだし、ASEANの「結束」を煽動したのはマレーシア・ランカウイ国際海空展でのものだ。共に政府や公式の形ではない。こうした考えが米国の外交文書や声明に記されたこともない。これは、南中国海での合同パトロールは米国内でまだ既定の政策にはなっておらず、計画と議論の段階にあると見られることを意味する。