野村総合研究所のチーフエコノミストのリチャード・クーさんは、「自分のみたところ、マイナス金利の導入は絶望の産物だ。QE(量的緩和)とインフレ目標が理想通りにいかないことに絶望した結果だ」と話す。
財金文化事業株式有限公司の謝金河会長がこのほど発表した論考にも、「経済を救うとみられる日銀のこの手段だがもうなす術もなくなっており、何かしてももはや役には立たない状況にある。市場はマイナス金利をますます信用しなくなり、資金はそれぞれに出口を求め、金融市場には災難(円高、株式市場の暴落)が起きている」とある。
金会長の見方によると、マイナス金利はまるで「毒薬」で、国債価格の利回りがマイナスになり、大手機関は国債を買わざるを得ない状況に陥ったという。
金会長は、「第一に、機関投資家、たとえば生命保険会社、年金基金、銀行は、相当に『買わざるを得ない』状況だ。日銀が他国の国債を買い入れて外貨準備とするのと同じことだ」とした上で、次のように指摘した。「市場のリスクも考え合わせると、資金を一時的に利回りがマイナスの債券に回さなければ、他の商品が、リスクのある資産が、より大きな損失を被ることになる。よってこれはリスク回避の意識によるものだ」。
債券王のビル・グロス氏も、「マイナス金利は経済を救わないし、市場や経済に反対の効果をもたらす可能性がある」と言い、新債券王のジェフリー・ガンドラック氏もまた、「マイナス金利は百害あって一利なしだ。銀行や金融株が大きな打撃を受け、金融市場の安定を損なう」と話す。
実際、黒田総裁の就任当初の志は、債券市場の利回り曲線(イールドカーブ)を抑えることによって、実際の貸出金利を低く抑え、資金がリスクの高い資産に回るよう促すことにあった。株式市場などがそうだ。だがマイナス金利の効果は期待とは正反対であることは明らかだ。
黒田総裁がマイナス金利を打ち上げた1月29日に、円相場は1ドル121.67円まで値下がりしたが、一時のあだ花に終わった。2月1日から円は上昇の一途をたどり、11日には111.06円まで値上がりして、8.72%上昇の記録をうち立てた。一方、日本株は17%の暴落で、安倍政権が政権を担当してからの3年間に株価上昇と円安を誘導するために行った努力がすべて水の泡と消えたかのようだった。29日の円相場は112.99円の水準を保ったが、日経平均株価は下落を続け1万6026円の低水準に落ち込んだ。
日本の苦境について、スタンダード・アンド・プアーズのチーフエコノミストのポール・シードさんは、「日本の中央銀行の白川方明前総裁は量的緩和とマイナス金利に常に反対してきた。安倍政権に合わせて量的緩和を実施することをよしとせず、市場のデフレ観測を固めてきた。2013年に黒田東彦総裁が就任すると、いきなり緩和を実施し拡大したが、効果はその後弱まっている」との見方を示す。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年3月2日