日本政府が進める一部中小省庁の地方移転計画はある程度の進展をみせたが、全体としては順調に進んでいるとは言い難い。移転が計画される7省庁のうち、数年以内の移転が確定したのは文化庁だけで、東京都から京都府への全面移転が決まっている。消費者庁の徳島県への移転、総務省統計局の和歌山県への移転は、今年8月になるまで確定しない。観光庁、特許庁など4省庁はしばらく移転を見合わせるとしている。移転計画がある22の研究機関は、国立健康・栄養研究所の全面的移転を大阪府が申請したほかは、一部機能の移転に同意したにとどまり、実際には現地の大学との共同研究や現地での研修といった迂回戦略を採るとみられる。このような状況で、日本政府が設定した目標とは大いにかけ離れている。
日本では人口と資源が東京に過度に集中していることから、多くの地方で経済が日に日に低迷し、ここ数年は「東京一極集中」の現象がみられる。地方経済を活性化するため、日本政府は2014年12月に地方振興の戦略をうち出し、中央省庁と全国的な研究機関の地方移転を重要な内容の一つとすることを閣議決定した。東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏だけでなく、他の43道府県もそれぞれの優位性を生かして、候補機関の移転申請を出すことができるようになった。
計画がうち出された当初、地方政府は積極的な反応をみせた。だが半年が経った頃に共同通信社が行ったアンケート調査では、初めは受け入れの意志を表明していた31府県のうち、引き続き「受け入れる」としたところは20府県にとどまり、残りの11県は「わからない」とした。多くの地方から、候補機関の顔ぶれ、部分的な移転にとどまること、地方と共同研究を行うだけというやり方に不満の声が聞こえてくる。
移転候補リストに入った中央省庁の態度は、移転希望、様子見、移転拒否と3種類に分かれる。
移転のさきがけとなる文化庁は文部科学省傘下の相対的に独立した事業機関で、文化芸術の振興、文化財の保護、著作権などの関連事業を担当する。移転プランによると、職員230人の一部が東京に残って国会対応や外交関係を行い、200人は京都に移転することになる。京都府は市内の廃校になった小学校跡地を改修して文化庁オフィスとして提供するほか、職員宿舎の建設費用も一部補助する予定だ。