1人の主婦が起こしたイノベーション
日本の鳥取県米子市にあるN.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社は、遠距離介護サービス提供の先駆者だ。代表者の神戸貴子さんは取材に答える中で、「弊社の狙いは煩雑な介護の仕事を細分化して、潜在的な介護人材を活用し、大都市で働くサラリーマンのために『1人暮らしの高齢者』の介護のプレッシャーを引き受けること」と述べた。
このイノベーションともいえるアイディアは神戸さん自身の体験に基づくものだ。「家族の中の若い世代や中年世代は自宅から離れた場所で働いていたので、自分の家と親戚の家の高齢者介護の重い負担が、実家で暮らし、看護師の資格があり、子どもを産んでからはずっと主婦だった私一人の肩に全部おおいかぶさってきた。目の回るような忙しさで、手伝ってくれる人が喉から手が出るほどほしかった。介護保険が使えないなら、全額自腹でもいいと思った」という。
厚労省の試算では、日本には看護師や介護の資格をもつが関連の仕事についていない人が約71万人いるという。
N.K.Cはこうした人材や介護の仕事をしてみたいという志をもった人をスタッフとして募集し、遠距離介護サービスを提供する。
同社は現在、鳥取県に60人、広島県と名古屋市に50人のスタッフを抱える。スタッフはプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4段階に分かれ、難度や複雑度に応じて介護を行う。プラチナとゴールドは日本の看護師資格か介護資格をもったスタッフで、医療行為の補助を行うことができる。シルバーとブロンズのスタッフは病院へのつきそい、買い物、調理補助などを担当する。現在、各段階ともサービス料金は時給2600円だ。
神戸さんは自分が中心になって「遠距離介護支援協会」を設立し、インターネットの動画による講座を通じて、介護や医療のスペシャリスト養成カリキュラムを提供し、試験も実施して、介護人材の育成に努めるとともに、遠距離介護サービスを全国に広めている。
説明によると、最初に同社のサービスを利用するのは大都市で働く子ども世代が多かったが、その後はサービスを受けた親世代の多くが自分で料金を支払って自ら介護サービスを受けるようになったという。
同社スタッフの渡辺さん(70)は、「かなり前に看護師をしていて、やめてからはずっと主婦で家にいて家族のために尽くしてきた。この会社に入ってから、生きることに新しい意味が加わったような気がする。人を助けることができ、小遣いも増えたが、より重要なのは地域や社会と関わる機会が増え、気持ちが充実するようになったことだ。将来、自分に介護が必要になった時は、自分もこのサービスを利用したい」と述べた。