通貨安競争に勝者はない
ワシントンで行われる第2回20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に再び注目が集まり、人々は具体的成果を待ち望んでいる。前回2月16日にモスクワで行われたG20財務相・中央銀行総裁は「断固として通貨の競争的な切り下げを阻止し、様々な形の保護主義に反対する」との共同声明を採択した。(文:石建勲・本紙特約論説員、同済大学財経研究所所長、同経済・管理学院教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
2012年第3四半期以降、米国、EU、日本、英国、オーストラリアなどの主要国は次々に金融緩和政策を講じて通貨供給量を増加し、通貨安によって景気刺激を図っている。今年に入ると通貨安競争は激しさを増す様相を呈している。中でも最も急進的なのが日本だ。日銀の黒田東彦新総裁は就任早々、一段と大規模な金融緩和政策を打ち出した。2年以内にマネタリーベースを倍増し、2014年末までに270兆円にする。総額10兆3000億円の景気刺激策と同時に、年2%以上の円安を目指す。
こうしたやり方は各国の批判を招いた。ドイツのメルケル首相は日本の金融緩和政策に懸念を表明。英国とドイツの中央銀行総裁は日本政府が為替政策を政治化することへの反対を公に表明。ブラジルの財務相は米国、日本、EUの超低金利が引き起す「通貨戦争」を猛烈に批判し、通貨供給量の増加がすでに世界の不動産価格を押し上げ、資産バブルを引き起していると指摘した。韓国とタイの高官も最近、日本の超金融緩和政策と米国の景気刺激策に失望を表明し、今後の世界経済の成長への懸念を表明した。米財務省は4月12日に議会に提出した報告で、日本は通貨の競争的な切り下げによるのではなく、国内措置によって国内目標を達成すべきだと指摘した。UBSのウェーバー会長は「自国通貨の切り下げによって競争力を高めるこうした日本のやり方が広まれば、世界経済は危険な状態へ向かう」と指摘した。