トヨタ、タイで年産100万台へ 進出50周年
「ハイラックス」などを生産するトヨタ・モーター・タイランドのバンポー工場。同国内の3工場ではフル操業が続いている=バンコク郊外、南日写す |
【バンコク=南日慶子】トヨタ自動車は8日、タイの車両組み立て工場の生産台数を将来的に100万台に引き上げる方針を発表した。今年の生産台数88万台にさらに12万台上積みする。新興国の自動車市場の拡大に対応するため、輸出拠点化も進める方針だ。
バンコク市内で開かれたタイの現地法人設立50周年式典で豊田章男社長が「近い将来、年産100万台レベルまで引き上げたい」と語った。
タイ政府は数年後に国内の自動車生産台数を300万台まで引き上げたい意向で、トヨタもそれに歩調を合わせる狙いだ。2007年に操業を始めたバンポー工場などには増産用の敷地があるため、生産能力の増強も含めて検討するとみられる。
トヨタは13年に乗用車を組み立てるゲートウェイ工場に第2工場をつくるなどして、生産能力を現在の67万台から9万台増の76万台に引き上げる計画を発表済み。経済成長に伴ってタイ国内だけでなく、東南アジア全域で自動車市場の拡大が見込めることから、生産台数をさらにのばすことにした。
豊田社長は13年に発売するタイ仕様の小型エコカーを、来年3月のバンコク・モーターショーで発表すると表明。さらに「世界に供給する」とも話し、タイから各国への輸出も検討していることを明らかにした。
トヨタは、1962年、日本の自動車メーカーとしては早い段階で、現地法人を設立。64年に車両の組み立てをはじめた。
89年にはエンジン工場も稼働させるなど、徐々に部品生産の集積も進めてきた。04年に生産をはじめた新興国向け戦略車「IMV」が大ヒットしたことで生産台数は一気に拡大。12年の販売台数は50万台、生産台数も88万台になる見通しで、タイでのシェアはいずれも1位となっている。
タイの自動車市場は拡大を続けており、12年は前年の約1.8倍の140万台に、輸出車を含めた生産台数も230万台になる見通しだ。成長市場をにらみ、日系メーカー各社は生産能力の増強を急ぐ。日産自動車は、タイの生産能力を現在の22万台から16年には37万台に増やす計画を発表。三菱自動車も日本向けに小型車「ミラージュ」の輸出を始めるなど、現地での生産能力を増やした。いすゞも10月、タイで売れ筋のピックアップトラックの新工場を稼働させたばかりだ。
■HV販売、年間100万台突破
トヨタ自動車は8日、今年、世界でのハイブリッド車(HV)の年間販売台数が初めて100万台を突破した、と発表した。1997年に産声をあげたHVは15年かけ、トヨタが世界で販売する車の1割以上を占めるところまで成長した。
10月末時点での世界の販売台数は、102万8900台。うち国内が6割弱の58万3200台、海外が4割強の44万5600台だった。当初は米国を中心に海外での販売が多かったが、エコカー補助金の導入などをきっかけに国内でも販売が急増。2年前からは国内が海外を上回り、今年は国内販売の40%がHVだった。
現在、世界で販売しているHVは20車種だが、2015年末までに20車種を新たに投入し、日米以外での販売拡大を進める方針。
■「厳しい時代、カイゼンの好機」張会長
「日本の製造業は厳しい時代と言われるが、私は会社と同じ年だから過去にも何度もあった」。トヨタ自動車の張富士夫会長(75)は8日、名古屋市で開かれたものづくりをテーマにした講演で訴えた。トヨタは今年、創立75周年。これまでも円高や石油危機、米国での排ガス規制などに苦しんだが、その経験が米国で日本車が売れることにつながった歴史を紹介。「厳しい時に頑張るたびに一段と力がつく。売れている時よりも、減産の時の方がカイゼンをするにはいいチャンスだ」と、奮起を促した。
asahi.com 2012年11月9日
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