中国の大型書店では今、村上春樹の作品が当然のように並べられている。表紙もさわやかで上品な雰囲気だ。そのため、村上春樹の作品が中国に進出したばかりの時、「大衆小説」という位置づけだったとは、想像もできない読者も多いだろう。1987年に日本で出版された「ノルウェイの森」は、1989年に中国語版 (林少華訳)が漓江出版社から出版された。また、1990年には、北方文芸出版社から「処女の世界に別れを告げる」との副題が足された「ノルウェイの森」(鐘宏傑、馬述禎訳)が発売された。村上春樹の名前が、中国でも広く知られるようになったのは、この2冊がきっかけだ。北京日報が報じた。
同2冊の表紙などは、露骨な性描写の多い同作品にふさわしく、大衆的雰囲気が漂うデザインとなっている。「漓江」から出版された「ノルウェイの森」の表紙には、黒のロングヘアーを結い上げて、上半身を露わにした和服姿の日本の女性が描かれている。そして左側に主題が縦書きで書かれ、右側には「100%純粋で率直な描写が、若い男女を感服させ、読者を酔わせる」と紹介されている。
一方、「北方文芸」の「ノルウェイの森」には、「処女の世界に別れを告げる」との副題も加えられ、高層ビルを背景に、ぼんやりとした表情の若い男女数人のほか、真ん中には下着姿の女性が肌を露わに描かれており、自由奔放な雰囲気となっている。裏表紙にも、ビキニ姿の西洋人女性が描かれている。そして、各章の題も好奇心を刺激する仰々しい言葉が並んでいる。