▽矛盾3:経済復興の実感が低下
日本の街頭で取材したところ、中産階級の女性が日本経済に対する悲観的な見方を語ってくれた。その女性によると、日本社会は少子高齢化がますます深刻になり、年金を納める人が減り、将来、年金がもらえるかどうかわからなくなっている。退職後の老後の暮らしが心配で、できるだけ貯金してお金を使わないようにしているという。
ニッセイ基礎研究所社会研究部の土堤内昭雄主任研究員は、「現在の日本社会の構造をみると、アベノミクスは中産階級にとって脅威になる。こうした状態を炭坑地域にたとえてみると、前方には常にリスクが横たわり、思いがけない出来事が発生すれば、あっという間に無一物になるような状態だといえる」と話す。
日本社会の構造的な問題だけではない。アベノミクスの企業業績の向上をよりどころとして、賃金を増やし、国内消費を拡大させるという夢は徐々に泡と消えようとしている。
今年の春季労使交渉(春闘)で、日本企業はさかんに賃金上昇を口にする日本政府に一撃を食らわせた。自動車メーカーのトヨタは基本給を月額1500円(約90元)引き上げることに同意しただけだった。自動車産業だけでなく、電子メーカーも誠意ある回答を行わず、パナソニックも基本給の1500円引き上げに同意するにとどまった。業績不振のシャープなどは定期的な賃金引き上げを行うと決定しただけだった。
共同通信社が3月に行った調査では、回答者の81.4%が「アベノミクスが経済復興を促進しているという実感がない」と答え、64.6%が「日本政府が17年4月に消費税率を再び10%に引き上げるのに明確に反対する」とした。それだけではない。日本国民はさきにヤフージャパンのニュースサイトが行った世論調査で、「アベノミクスは有名無実」との評価を下している。
中小企業と中産階級の犠牲を代償として支払うアベノミクスには数々の破綻がある。重要なエンジンは期待したような効果を上げず、マイナス影響ばかりが次々現れる。今年の金融環境と外部環境の不振の中、日本の大手企業は業績予想を次々に引き下げ、日本経済の前途をさらに暗澹とさせている。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年5月31日