社会文化:定年後も死ぬまで働く
経済協力開発機構(OECD)が発表している統計によると、16年、日本の65歳以上の高齢者の労働率は約23%で、主要7ヶ国(G7)のうち最高で、米国(19%)をも上回っている。多くの日本人は「死ぬまで働きたい」と思っており、「働いていないと老け込む」と思っている人さえいる。長時間の時間外労働が「過労死」という問題につながっているものの、負担の大きな仕事に文句を言う日本人は依然として少ない。日本の文化は、みんな一生懸命働かなければならないと強調している。
しかし、日本の高齢者が「死ぬまで働く」のは、人材が不足しているからとか、経済的に苦しいからという理由だけではなく、高齢者の生活態度、誰かとつながっていたいという気持ち、孤独死に対する怖さなどとも切っても切れない関係にある。
「一生懸命」という言葉に、日本人の人生に対する価値観全てが詰まっている。東アジアの儒家文化圏において、「勤勉さ」と「自己犠牲の精神」が、人々が追求する人生哲学となっている。日本では、自分は「大変だ」という言葉にはいろんな思いが込められており、大変であればあるほど誇りに感じ、他の人に「勤勉」と言われるのは最高の誉め言葉となる。
そのような生活態度であるため、日本人は働かないという状態を嫌がり、高齢者は「まだ働けるし、働きたい」と思っている。仕事は家族との関係をつなぐかすがいで、生活を続ける灯りとなる。一生懸命働くことが、給料をもらって仕事する高齢者の日常生活であり、それによりプライドと社会における安心感を保っている。
ペースの速い現代社会において、人間関係が希薄になり、多くの高齢者が「孤独死」の危険に瀕している。10年1月31日に放送されたNHKスペシャル「無縁社会 ~無縁死3万2千人の衝撃~」は、「孤独死」をテーマに、「新たな死」の軌跡を丹念にたどっている。「無縁死」とは、家族や社会とのつながりを失い、誰にも知られずに死に、遺体の引き取り手もない人を指す。統計によると、日本では年間3万2千人が「無縁死」している。
京都大学の研究者によると、日本の多くの世帯は三世代同居中心から核家族中心へとすでに変化し、今では「一人暮らし」の方向へと変化している。このような局面では、文字通り長期間孤立無援の高齢者にとって、「定年後も働く」というのが孤独死を避けるための仕方ない選択となる。
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