2003年10月、太地町で隠し撮りされたイルカ漁の様子。海は真っ赤に染まった。 |
▽なぜイルカ漁を止めないのか?
イルカ漁をめぐる議論は、安倍首相のFacebookにも飛び火している。「モザンビークを訪問している」という全く捕鯨と関係のない投稿のコメント欄に、国内外から「野蛮な殺りくをやめてください」といった意見が寄せられている。 一方、「日本に対してだけ延々とクレームする姿勢がアンフェアとしか思えない」との意見も見られた。
2010年11月には、反捕鯨団体と太地町側の意見交換会が行われた。太地町・三軒一高町長は、「双方の観点が180度違い、意見がかみ合うことはなかった」と述べた。インタビューに答えたある漁師は、「問題がヒートアップすれば、大規模な衝突に発展するだろう」、「我慢できないのは、イルカ漁を隠し撮りされたこと。生活のためにイルカ漁をしているのに」と語った。
2009年のデータによると、人口約3200人のうち、漁業従事者は465人。ある漁業関係者は「来てみればわかるが、この田舎に大きな産業はない。多くの漁師はイルカ漁で生計を立てている」と語る。
もちろん、イルカ漁をやめた人がいないわけではない。イルカ漁師としては3代目という、静岡県伊東市富戸生まれの石井泉氏は、猟のときにイルカの涙を目にし、二度と殺さないことを誓った。今は観光客向けにドルフィンウォッチングのガイドをしている。しかし、転職後に石井氏の収入は減少し、生活も厳しくなった。