国家エネルギー局元局長の張国宝氏はかつて、石炭が一次エネルギーの67%を占める中国にとっては、温室ガスを排出しない原子力発電所は現実的な選択肢だとの見方を示している。沿海に建設される原子力発電所は海水を冷却水とするため、淡水資源の節約ともなる。
国際原子力機関の予測値によると、世界の原子力発電所の設備容量は2030年までに最大で727GW(1GWは10億W)に達し、現在の2倍となる見込みだ。
国務院は2014年末、「エネルギー発展戦略行動計画(2014—2020年)」を打ち出し、世界最高の安全基準を取って安全を確保することを前提に、東部沿岸地域で新たな原子力発電所の建設を適時始動し、内陸部での原子力発電所建設についても検討・論証を進める方針を発表した。2020年までに稼働中の原子力発電所の設備容量は5800万kW、建造中の原子力発電所の設備容量は3000万kW以上に達する見込みだ。
▽原発の安全を確保するための「2つの1000分の1」
日本の福島の事故が発生した後、原子力発電の絶対の安全に対する国民の要求は高まった。
原子力発電の安全性を確保するため、原子力発電には「2つの1000分の1」という定量的な安全目標が掲げられた。第一に原子炉の事故が原子力発電所付近の個人または住民グループに与えうる急性死亡リスクは、その他の事故によって与えられうる急性死亡リスクの0.1%を超えないものとする。第二に、原子炉の事故が原子力発電所付近の個人または住民グループに与えうるガンによる死亡リスクは、その他の原因によってもたらされるガンのリスクの0.1%を超えないものとする。
研究によると、この「2つの1000分の1」の安全目標を実現するには、原子力発電所の原子炉で一年間に炉心が重大な損傷を受ける可能性が1万分の1よりも少なく、事故初期に大量の放射性物質が放出される可能性が10万分の1である必要がある。