多くの映画評論家は、「ベイマックス」に、ハリウッド大作にありがちな目を奪う特殊技術の要素を感じることはなく、素朴な人間性を感じると評価している。しかし、実際には、同作品にも浮遊技術やレーザーカッター、サーボモーターロボットなど、ハイテクの要素が数々登場する。視覚効果という観点から見ても、同作品には想像力をかきたてる要素や華麗な効果が詰まっている。しかし、それとは対照的に、ベイマックスはいたってシンプルなイメージ。体も簡単な線で描かれ、顔は黒丸の目二つが黒い口の線で結ばれているだけ。そして、ペンギンのようにノロノロ歩く。ベイマックスの本当の魅力は、相手の心を癒すために一生懸命尽くすその純粋で善良な性格だ。
南京市の映画評論家・舒克は、「つまりハイテクも万能ではないということ。映画は、技術と芸術の融合であるべき。中国のアニメ映画も、派手な画面だけを追い求めるという間違いを犯してはならない。実際には、目を奪うシーンよりも、感情性に富んでいるほうが、人を感動させる。ベイマックスの大ヒットは、中国のアニメ映画が教訓を得る機会。実際には、技術の面では、中国も引けを取らない。しかし、キャラクター作りやストーリーの構造などの点ではまだまだ進歩が必要。これが、我々が奮闘すべき課題」と指摘している。
江蘇省新聞出版局でアニメの管理をしている朱鑫さんも取材に対して、「ベイマックスは中国のアニメに、技術がどれほど優れていても、本当に心を打つのは、素朴な愛や人の心に直接働きかける感情的な要素であるということをはっきり教えてくれている。そのため、子供のご機嫌取りをすることを考えるのではなく、教訓的なストーリーを考え出すことを覚えなければならない。そのようにして初めて、中国のアニメは成長する。江蘇省は近年、海外アニメ映画のアウトソーシング拠点となっており、優秀な作品も生み出してきた。しかし、その影響力を持つ中国オリジナル作品は非常に少ない。今回、ベイマックスが世界中で大ヒットし、たとえそれがロボットであったとしても、本当に心を打つ要素がなければ、観衆を獲得することはできないということを、あらためて感じることができた」と語っている。(編集KN)
「人民網日本語版」2015年3月19日