JICA中国都市廃棄物循環利用推進プロジェクト・チーフアドバイザー 大石千尋さん
大石千尋
1998年から2002年まで日本国際協力機構(JICA)の一員として中国に一度目の駐在。2010年から2015年までの二度目の駐在では、JICA中国都市廃棄物循環利用推進プロジェクト・チーフアドバイザーを務め、北京を拠点にプロジェクトを展開した。2011年4月7日に正式始動したこのプロジェクトは、中国国家発展改革委員会とJICAが協力して実施した技術協力プロジェクトであり、日本の都市廃棄物の収集・分類・効率循環利用・安全処理の進んだ経験を生かし、中国の特色ある安全で効率的な廃棄物循環利用システムを構築することを目的とするもの。プロジェクトの成果として、「都市廃棄物の適切な管理・循環利用の推進のための関連政策・対策」を主旨とした政策提言書が作成され、中国政府に提出された。プロジェクトは2015年1月に完了となった。
■中国人はとても率直で、また合理性と効率性を重んじる
――中国での仕事を通じてどのようなことを感じましたか?
中国で生活する多くの日本人と同様に、北京で多くの中国の友人と知り合いました。知り合った友人と交流する中で、少しずつ中国人や中国というものを理解して行きました。中国人はとてもある意味率直で、無用な礼節にはこだわらないという印象を持っています。例えば、中国人は仕事上の問題に関して上司や同僚と激しく論争することがあると思いますが、特にわだかまりは残りません。上下関係を重視する日本の職場に慣れていると、これはとても不思議に思えます。中国人の職場には堅苦しさがなく、効率的に仕事を進めることができると思います。しかし、このような効率重視の進め方、急速に成果を出すことや目前の功利を求めるような考え方は、バランスの取れた持続的発展の観点から見ると、何らかの困難をもたらす可能性があるのではないでしょうか。例えば中国における環境問題の発生もその一つと言えるのではないでしょうか。
■日本の人に中国の本当の姿を伝えたい
―――2013年に発行された「在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由」は日本でも好評でしたが、大石さんもこれに寄稿しています。どのような思いでこの取り組みに参加したのでしょうか?
日中関係が緊張したその時期、私は中国にいました。中国のいくつか場所で日本関連のデモが発生しましたが、日本のメディアの報道は発生したデモのみにフォーカスしたものが多く、中国の普通の市民がこのような理性的でない過激な行動に対して必ずしも賛成していないという側面が抜け落ちているように感じました。このままでは日本人の中国に対するイメージは下がる一方なのではないかと思い、日本人に中国の全体像について理解を深めてもらうため、中国に滞在する自分には日本では報道されていない部分を伝える責務があるのではないかと思いました。