MERS(中東呼吸器症候群)が韓国で猛威を振るっている。今のところ韓国経済に大きなダメージはもたらされていないが、観光業関連企業はすでに影響を被っている。まず、外国人観光客の訪韓旅行のキャンセルが目立ち始めている。次に、韓国人も、中東への旅行を見合わせている模様だ。経済参考報が伝えた。
韓国の旅行最大手「ハナツアー」はこのほど、北京や上海から韓国を訪れる予定だった観光客約300人が、4日間から12日間のツアーをキャンセルしたことを明らかにした。韓国・聯合ニュースは、「韓国旅行発展局の推計によると、中国大陸部からの観光客約2千人と中国台湾からの約500人が、韓国旅行をキャンセルした」と報じた。また、韓国旅行発展局は、現在のMERS感染状況から見て、今後、6月に予定されていた韓国旅行のキャンセルはますます増えるだろうと予測している。韓国旅行サービス機関は、中国人観光客の訪韓ツアーキャンセル率は、15%から20%に上ると見込んでおり、これは、韓国が計7万人もの中国人観光客を失うことを意味している。
韓国の百貨店や免税店も、今後の観光客の激減を憂慮している。韓国サムスン証券の楊アナリストは、「MERSに対する心配が日を追って高まるにつれ、消費者の足は、人口が集中している繁華街から遠のくであろう。これは、百貨店、映画館、娯楽施設にとって由々しき問題だ。今後、中国人観光客もますます激減する見通しで、免税店は大きなダメージを受けるだろう」と予測した。
韓国・聯合ニュースは、ハナツアー担当者の話として、「MERSによる死者が増え、感染が韓国全体に拡大するという事態になれば、中国人観光客の足はますます韓国から遠のき、かれらの多くは旅行先を日本に変えるだろう」と報じた。
韓国旅行発展局が今年初めに発表した統計資料によると、2014年、訪韓中国人観光客は前年比41.6%増と激増、延べ612万7千人に達した。外国人観光客全体に占める中国人観光客の割合は、2013年の35.5%から2014年には43.1%に増えた。2014年、中国人観光客が韓国にもたらした経済効果は18兆6千万ウォン(約2兆円)、34万の雇用ポストを創出した。韓国旅行発展局は、今年の訪韓中国人観光客は延べ720万人に上ると予測している。
韓国国内の観光レジャー市場に関しては、多くの人が集まる娯楽施設、ウォーターランド、レストランなどにも、「赤信号」が出始めている。多くの韓国人は、感染を恐れて、外出や外食を避けるようになった。シネマチェーンCGVの観客動員数を見ると、5月22日、23日の週末は延べ約132万人だったが、先週末(5月29日、30日)は延べ121万人に減少した。