日本料理は「自分の好みの味を加えるというより、自然のものを如何に美味しく食すかということを創意工夫を織り交ぜ丹念に考え抜いて形成された料理」であり、この点は他の料理にはない魅力。一方で中華料理は、自分の好みの味を上乗せして楽しむのがメイン。例えるならば、「中華は足し算で、和食は引き算」。しかし、日本料理のルーツの多くは中国に由来するのも事実。日本料理で基本となる味噌や醤油が中国から伝来したものだということはよく知られているが、「日本料理の定番である刺身も、中国で先に食されて、三国志の文献でも、スズキの刺身が曹操の宴会で振舞われた記述があるのほどポピュラーなものだった」ことは意外に知られていないと中谷さんは語る。調理に欠かせない「包丁」も、昔中国で料理人のことを「庖丁(パオディン)」と呼んでいたことに語源を遡ることができる。「重陽の節句でも菊の花があしらわれた懐石料理がでるなど、中国の故事からヒントを得て献立を考える料理人もいる。そういった意味でも、中国文化と日本料理は切っても切れない深い関係にある」と語る。
日本では料理人の世界は上下関係が非常に厳しいといわれるが、「旬彩」唯一の日本人として厨房に立つ中谷さんは、如何に中国人弟子たちと接しているのだろう。中谷さんは、中国では日本人特有の「俺のやり方を察しろ法」は通じないという。日本では弟子が間違うまで放っておいて、失敗して悩んでいるところを見計らい的確にアドバイスをするのに対し、中国の若い弟子は間違ってもそのまま流してしまうことがあるので、間違うであろうことをなるべく先に教えておいて、間違ったときに「だから言っただろう。そこを気をつけろ」という具合に、もう一度正すという二度手間になってしまう教え方をするという。言うことは中国人に対しても日本人に対しても同じで、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにお出しする、衛生に気をつけるなど、当たり前のことばかり。ただ、そうした当たり前のことが当たり前にできるようになるまで言い続けることはある。しかし、「中国の若い料理人の場合は、偶然日本料理をすることになった、給料が高いから働くことにしたといった具合で入ってくる場合があるので、モチベーションの部分では日本人とは大きく異なり、言い続けると辞めてしまう人もいる。その中で、日本料理が好きだ、日本料理をやっていきたいと思う人が一人でも出て来てくれればとても嬉しい」と中谷さんは言う。
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