▽予想と反対の結果 内憂を誘発
だが現実は理想のように美しくはなかった。マイナス金利の発表後、積極的な反応は現れなかった。
劉研究員は、「マイナス金利が最初に日本市場にもたらしたものは指導の混乱だ。確かに最初は株価上昇と円安を招いたが、わずか1週間しか続かなかった。春節(旧正月、今年は2月8日)連休期間には米株価の下落にともなって円が大幅に上昇し、日経平均株価は1万4千円を割り込んだ。日銀が発したシグナルと理論上の積極的な役割を、市場は受け入れることなく、リスクをこそより多く見通している」と述べた。
日本の金融市場もマイナス金利の下で変化している。劉研究員は、「マイナス金利政策でダメージを負う可能性のある中小企業では不満が高まり、郵貯銀行も貸付金利の一部を引き下げた。資本市場では長期国債が買われていることから10年もの国債の利回りがマイナスになった。こうした要因を受けて、日本の金融市場は大幅な値上がりと値下げに見舞われ、政策が誘導する市場へと姿を変えつつある。また低金利やマイナス金利が商業銀行の収益力をさらに弱めている」と説明した。
このほか金融の不安定さや企業の収益力の低下が日本財団の影響力を弱めている。劉研究員は、「日本財団の対外投資は日本のコア競争力であり、金融市場の中で金融企業の利益が低下したなら、日本に与える影響は言うまでもない。現時点では、マイナス金利は円高の歩みを抑えられていない」と指摘した。
マイナス金利によってもたらされた円高は日本の製造業が海外で生み出した利益の多くを食いつぶすと同時に、銀行の利益を減少させ、債務者のコストを引き上げた。モルガン・スタンレーのまとめたデータでは、日本のマイナス金利政策による日本の銀行業の純金利マージン(NIM)は過去25年間で最低の水準に落ち込んだ。劉研究員は、「こうした状況の中、日本経済はインフレリスクから根本的に脱却することができず、アベノミクスの意図とは正反対の結果になった」との見方を示した。