「任期制の研究員はプレッシャーがある。契約期間内に一定の研究成果を出せなかった場合、契約を更新してもらえないだけでなく、他の機関に再就職するのも難しくなる。そのため、目前の功利を急いで求める研究員も出てくる。昨年、世界の学術界を震撼させた小保方晴子の論文ねつ造事件も理研で発生した」と凌さん。
理研では、定年制の研究員の研究成果は報酬に反映されず、論文や成果の有無で給料やボーナスが変わることはない。しかし、研究者が重要な仕事を担っているかどうかは、研究業務を紹介する時に一目瞭然で、誰でもすぐにピンとくる。研究の進展があまりなかったり、重要でないと見なされてしまうと、科学研究経費の申請に影響が出る。そのため、定年制の研究員でもプレッシャーがある。
凌さんによると、野依良治・元理事長は、誰もやっていない研究をするように常に鼓舞し、自分が編み出した新しい研究の原点を基礎にそれを発展させていくようにと指示していた。理研は論文の数をむやみに追及することはなく、求めているのはクオリティの高い論文だ。最大で40-50人が在籍するような研究室でも、1年に1つの論文も発表しないというケースもある。
凌さんは、「日本から連続でノーベル賞受賞者が出ていることから分かることの一つは、他の人もやっていることをやっていてはいけないということ。誰もやっていない研究を長く、こつこつと続けることで、誰もたどりつけない高みに到達できる。そして、少しずつ海外の研究者の注目を集め、認められるようになって初めて、ノーベル賞を受賞する可能性が出てくる」と分析する。
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