特筆すべき点は、このような流れは、米日の貿易摩擦やさまざまな逆風、日本人の人件費高騰などによって止まってしまい、特に02年以降に中国が世界市場に進出したことで日本の製造業の優位性に限りが出たことだ。製造業について語る以上、製造業が日本の国内総生産(GDP)に占める割合が減少している点に言及しないわけにはいかず、その後の10年ほどの間に、その割合は4分の1から今では5分の1以下になった。
その原因の一つに、日本の製造業の長所は技術にあるものの、技術に対する盲目的な信頼が足かせとなっていることがある。日本では、物づくりに対するこだわりにより、技術を磨くことが特に重要視されるようになり、現場の声が重要視されるため、生産の最前線で働いている人や技術者がますます発言権を持つようになる。そして、企業戦略も、技術第一、市場第二になってしまう。
ある意味、技術の完璧さを求めると、コストの上昇を招くだけでなく、市場が求めているものとは別の方向へ進んでしまうという結果になりかねない。そして、革命的な商品を作る機会を逃してしまうことになる。日本の商品はこれまで技術だけに頼って、市場で高いシェアを誇り、数々の成功を収めてきた。しかし、グローバル化の競争が激化する現在、そのような戦略にはハイリスクが伴う可能性がある。例えば、ソニーのウォークマンなどの商品はかつて、世界で一世を風靡した。しかし、新製品を次々と打ち出す韓国のサムスンが登場すると、押され気味になり、それまで世界最先端だった半導体業界も韓国などに追い抜かれてしまった。
神戸製鋼の不正発覚を見ると、改ざんがかなり長い間発覚しなかった一つの原因は、一人の人が同じポストに就いている期間があまりにも長いことにある。高齢化社会が到来するにつれ、日本の企業でカギとなっている技術は後継者不足となっている。日本の製造業は往々にして、大企業を中心とする多層的サプライヤー体制となっており、提携関係が固定化されている。そして、サプライチェーンの末端に位置する中小企業は往々にして立場が弱い。筆者が東京大学を訪問した際、長期にわたってトヨタなどの企業に注目している東京大学製造業管理研究センターの藤本隆宏教授と会うことができた。藤本教授は、「ここ20年、日本の企業の生産率は向上していないものの、工場の現場で働く人の効率は向上を続けている。これは、日本の製造業が認め、誇りにすべき点であるものの、問題は、労働者の効率向上は往往にして、資本投入がもたらす効率に劣るということ」と指摘していた。
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