一番大きな問題は資金の問題だ。08年、武田薬品は、米国バイオ医薬品会社・Millenniumを買収し、買収戦略により自社商品の世界市場におけるカバー率拡大を試み始めた。そして、11年以降、武田薬品は毎年1、2件のペースでM&Aを実施しているものの、その額はいずれも20億ドル(約2000億円)以下で、資金規模はそれほど大きくなかった。しかし、今回の買収に必要な資金は約6兆8000億円と巨額で、武田薬品にとっては大きな負担となる。あるアナリストは、「武田薬品の17年第4四半期(10-12月)時の現金・現金等価物はわずか43億ドルで、200億ドル以上の現金を支払うために、多額の資金を借りなければならない」と分析している。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、武田薬品が債務削減の対策を講じないのであれば、シャイアー買収による財務負担は、買収により得られる良い影響を上回ることになるだろうと予想している。
2つ目の課題は2つの企業、特に研究開発の力をいかに統合するかだ。海外メディアの報道によると、今回の買収により武田薬品の執行チームは、「2つの企業の研究開発チームを統合し、世界的に影響力を持つ研究開発連合に発展させたい」としている。武田薬品の研究開発責任者・アンディ・プランプ氏は、「研究開発の面の統合の準備はできている。今回の買収が大きな変革の機会だと信じていないのなら、当社は買収には乗り出さない。シャイアー買収は当社にとって戦略的意義があると信じている」との見方を示している。
3つ目の課題は、買収相手がもたらすリスクだ。例えば、内部管理がうまくいかなかったり、商品の売れ行きが思うほど伸びなかったりすることだ。これまでの日本の製薬会社が実施した海外企業の買収を見ると、成功例はほとんどなく、失敗したケースのほうが印象深い。例えば、08年、製薬会社・第一三共が46億ドルでインドの製薬会社・ランバクシー・ラボラトリーズを買収し、インドで過去最大の上場企業の海外企業による買収劇となった。しかし、買収完了後、インドにあるランバクシー・ラボラトリーズの複数の工場で品質管理の問題が立て続けに明るみになり、米国の食品医薬品局(FDA)は同社の薬品の輸入を禁止し、株価は大暴落となった。最終的に、その買収に失敗した第一三共はインドの製薬会社・ファーマシューティカル・インダストリーズにランバクシー株を売却している。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年5月21日
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