製薬業界で日本最大手の武田薬品工業はこのほど、総額460億ポンド(約6兆8000億円)で、アイルランドの製薬大手・シャイアーを買収することで合意したと発表した。日本企業のM&Aとしては過去最高額で、製薬業界では、ここ10年で3番目に大きな規模の買収となった。 経済日報が報じた。
近年、多くの製薬会社がシャイアーとのM&Aを試みてきた。例えば、2014年、米国のバイオ医薬大手アッヴィが約540億ドルで買収することで合意し、本社の英国移転を計画したが、企業税回避目的と見なした米政府の税制変更で破談となった。アッヴィがシャイアーの買収失敗から4年経ち、今度は武田薬品が買収に乗り出し、5度の買収額引き上げを経て、ようやく買収の合意に至った。
武田薬品はなぜこれほどの大金をはたいてまで買収にこだわったのかという点については、製薬会社のM&Aにおいてしばしば動機となるいくつかの目的があるが、今回の買収においても、そうした要素を見てとることができる。まず、買収によるイノベーション能力の向上。シャイアーの主要業務は、活動過多や眼球乾燥症、出血性疾患、ファブリー病、ゴーシェ病など希少疾患に関する医薬品の開発・製造となっており、そのバイオ医薬品の研究・開発能力は世界でトップクラス。希少疾患は、世界の医薬品産業で最も成長のポテンシャルが高い分野の一つと見られている。シャイアーを買収することで、武田薬品が世界の希少疾患用薬品の市場で大きな影響力を手にするようになるのは明らかだ。次に、「パテントクリフ」の回避。パテントクリフとは、新薬に関する特許が切れたあと、後発医薬品(ジェネリック)の進出によって売上が激減することを指す。医薬品業界では、新薬の特許権存続期間は20年ほどだ。特許権存続期間中、特許を持つ企業はそれを使って巨額の利益を確保することができる。しかし、特許が切れると、他の製薬会社が一斉に後発医薬品を発売し、その企業の売り上げや利益は激減することになる。統計によると、売れ筋の薬の場合、特許が切れると、その売り上げはほとんどの場合、特許期間中の70%にまで激減する。武田薬品は今まさにこの問題に直面している。近年、武田薬品が開発した薬品の特許が次々と期限切れになっており、「パテントクリフ」の危機が高まっている。また、研究開発チェーンにおいてポテンシャルの高い、後続新薬品も少なく、業績の成長を牽引する力がなく、業績を右肩上がりにするために、武田薬品は買収という策に出たとみられている。
しかし、今回の買収により前途が開けたという訳では決してない。なぜなら医薬品業界の買収につきもののリスクが今回の買収にも明らかに存在しているからだ。市場も今回の買収に対してはネガティブな反応を見せ、最近、武田薬品の株価が右肩下がりになっている。
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