米アップル社がこのほど発表した最新の製品が貿易戦争の暗い影の中で埋没しかけている一方で、米国の保護貿易主義的政策に対するアップルの不満が注目を集めている。時価総額世界一のIT大手アップルは、供給チェーンのグローバル化を通じて競争力を強化したいが、「関税の剣」による損害を避けるのは難しく、進退が窮まりつつある。「経済日報」が伝えた。
アップルがこのほど発表したところによると、米国が中国からの輸入商品に追加関税を課すと、アップル製品の生産コストと市場での販売価格の上昇は避けられず、最終的にアップルのグローバル競争力に影響する。アップルのこのような問いかけに対するトランプ大統領の回答は非常にストレートで、「米国で生産すればいい。今すぐ新工場を建設したら」というものだった。アップルは今年初め、過去最大規模の資金回流計画を発表し、5年以内に米国で300億ドル(約3兆3918億円)の投資を行い、2万人以上の雇用を生み出すとした。だがトランプ大統領の言うように米国ですべての製品を生産するのは、アップルには出来ない相談だ。
アップルは供給チェーンがグローバル化し、プラットフォーム化した企業の典型で、サプライヤー769社のうち、中国企業が350社を数え、その他は欧州企業、日本企業、韓国企業だ。アップルが高いコストをのんで米国に回帰して生産を行えば、世界中に広がった供給チェーンの各メーカーは「米国ファースト」のために「自己犠牲」を強いられるかもしれず、アップル自身も中国市場を失う巨大なリスクを負うことになる。だがアップルが大統領の要求に従わなければ、頭上に振りかざされた「関税の剣」が経営コストを増大させることは確実だ。たとえば携帯電話なら、関税の重圧で価格が上昇し、競争力が低下し、イノベーションへの投資の負担が増大し、ひいては今後の発展能力に影響することになる。
アップルの進退窮まった様子から、さまざまな問題がみえてくる。
まずトランプ大統領は「製造業の米国回帰」はすぐにも実現するとしているが、これはいささか短絡的な見方だと言える。製造業の運営は非常に複雑で、規模の大きな企業の1社や2社を米国に回帰させれば、「無から有を生み出し」、「ローマを一日でなす」ことはできるかといえば、それは絶対に不可能だ。1980年代以降、米国を代表とする一連の先進国が「脱産業化」を推進するようになり、産業が国外に移転して数十年が経つ。そして今、製造業を再び米国に回帰させるのは非常に難しいことだろう。回帰するには多大なコストを支払い、熟練工を育て、価値や理念を転換させることが必要だが、どれもすぐに実現するようなものではない。ましてや現代のグローバル製造業は高度に依存し合い、ごく小さな部分に触れるだけでも全体に影響が及ぶ。単独でグローバル製造業の発展の流れを左右できるような国は一つもない。
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