これまで日系企業は日本から駐在員を派遣し、経営や指導に当たらせてきたが、駐在員の通常の給与・駐在手当などで、多大な人件費を要する上、通訳も雇う必要があった。駐在員も異国の環境に慣なければならないので、着任してからすぐに活躍するというわけにはいかない。そこで日本の本部で育てあげた中国人幹部を中国に転勤させ、新工場の運営に当たらせた方が、より効率的な運営ができる。本社との連絡のため日本語人材の需要がなくなるわけではないが、日系企業でありながら通訳人材は不要となり、日本語自体の必要性も下がる。実際に多くの日系企業では、日本人の現地スタッフを減らす努力をしている。
また、日系企業が駐在員を派遣する場合でも、最近は中国語ができる日本人を派遣している。ある日系の大手小売業では、日本人スタッフが中国人に中国語で直接指示をするだけでなく、レジが混み合うと自らレジに入り、顧客と直接対話しながら、対応に当たっていた。このように日系企業は現地化してきている。
もう一つ付言すると、上海や深センでは日本語通訳などで7,000元以上の募集もあるが、これらの都市では低い給与である。実際に、上海や深センに行って通訳になったが、生活が苦しく、結局2~3年で地元に帰ってしまうケースもある。おそらく内地で4,500元前後の給与を得る方がよい生活ができるし、マンションを買うチャンスもまだある。給与の伸び代もある。中国では給料が安いにもかかわらず、離職率が低く、応募者が多い職種もあるのだ。また、日本と比べ、中国は物価や収入の地域差が大きく、不動産などで財産を築くことが多いため、給与の額で生活の質を判断することはできないので、単純な比較はできないのだが、それにしても民間企業で4,000元を下回る給与は、やはりかなり厳しいといえる。
では、就職難に対して私たち日本語学科の教員は何ができるだろうか。大連の状況は、そのヒントとなると思われる。私が2~3年前に調査をした際、日本語学科が全国的に厳しい状況にある中、大連の状況は唯一の例外で、日本語科の就職は依然よかった。特にアウトソーシング業での日本語人材の活躍に目を引かれた。大連にはテレフォンセンターのオフィスがたくさんあり、メーカーなどのカスタマーサービスを請け負っている。スタッフの給与は中国の平均月収より2倍近く高く、毎日日本語を使うので、日本語も上達するという。アウトソーシングにはデータ入力なども盛んであるが、電話応対となるとスタッフが企業の顧客と直接対話するので、言語能力や知識だけでなく、コミュニケーション能力やマナーも要求される難度の高い業務だ。日本で日本人を雇うより、大連で中国人スタッフを高待遇で雇う方が経営上も効率的だし、彼らスタッフも日本で働くより質の高い生活を得られる。
また、日本では労働者人口が減少し、年金制度の維持が大きな問題となっているなか、中国人を主とする外国人の働き手は日本社会を支える重要な柱となって来ている。この流れを加速させる法案、出入国管理法改正案が11月、衆議院で可決された。これまで中国の日本語科学部生は卒業後に日本へ留学し、日本で就職していたが、今後は中国の大学卒業後、直接、日本の企業に就職するという学生も多くなって来るだろう。
このような時代の急変にあって、中国の大学の日本語教育は、社会が求める人材を輩出できていないようである。ビジネス日本語会話やビジネス文書などの教材は、いまだに駐在員や総経理に随行するというシーンで構成されている。これは、もはや企業が望む人材ではない。さらに、今インターネット上には様々な学習ツールやコンテンツが溢れている。学生は自立して勉強できる時代になってきているので、教師の役割もそれに応じて変化を迫られている。
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