今は、実務能力に長けた新卒者や複数の専門をもつ複合的人材などが求められてきているが、企業などでの実務経験がほとんどなく、自分の狭い専門しか知らない教員が日本語の授業を担当せざるをえないのも大きな問題である。大学では教員の研究業績が重要視されているため、教員自身の専門知識を教えるのが授業の本来の姿ではないかと思うのだが、新規教員は基本的に学位や研究業績による評価で採用が決められているので、日本語学科においては彼らが日本語を教えている。大学教員の応募要件(能力・経験)と業務(教育)が一致していないので、研究と教育の両立はより難しくなっている。これに加え、近年は日本人教師(外教)の採用条件が年々上がり、審査も厳格になり、採用が難しくなってきている。これまで日本人教師が担ってきた作文や会話などをも、中国人教師が担当する必要が出てきている大学も少なくないようである。
そこで、たとえば企業と連携し、実務者に教壇に立ってもらい、翻訳や通訳、ビジネスマナーなどを講義してもらうことも一つ方法として考えられるだろう。衆知を集めて改革していかねばならないし、その実現は容易ではないが、日本語科の現状を鑑みると、思い切った対策が必要だと言わざるを得ない。
また、大学や教員が学生のために努力すべきことは、日本でのインターンシップ先の開拓と在学中の留学先の開拓である。先ほど述べたように、日本では労働者人口が減少している一方で、やや高度な日本語や複雑な業務をこなせる中国人が増えている。インターンシップによって、授業では教えられない経験を学生自身が身をもって体験できれば、他の専攻にはない魅力となるだろう。
ただ問題もある。インターンシップに関しては国内に多くの仲介業者があるが、受入れ企業が事前に学生と直接面談できなかったり、学生は事前に仲介業者から聞いていた話と異なる待遇や環境であったりというトラブルが起こりやすい。また仲介料も学生負担である。しかも企業側も別に仲介料を払うことが多い。仲介業者は学生を日本に送ることで収入を得ているので、不利なことを話したがらない。私は以前説明会に出席して話を聞いたことがあるが、学生に説明していた担当者は現地の状況をよく知らなかった。例えば、交通が極めて不便な場所にあることなどをしっかり伝えていなかった(留学の斡旋業者も同様で、ドラッグストアーでアルバイトをすれば1時間300元稼げると説明され、驚いたことがある)。そのためか、インターンシップ受入企業は、学生と直接面談し、待遇や環境についてきちんと説明した上で、インターンシップに来てもらいたいという声が聞かれる。学生に社会の一員としての自覚があるのか、日本の文化やルールを十分理解しているのか、ただ日本に来て遊びたいだけなのか、企業にとってはこれらが重要であるので、この声にどう答えるかを考える必要がある。たとえば信頼できるインターンシップ受入企業であれば、学院が直接協定を結び、実習環境などについて日本の現地に赴いて定期的に確認する方が、より安全で効率的かもしれない。
また在学中に1年間留学する機会を提供することも重要だと考える。今までは日本の大学と提携することで交換留学枠を得る方法が主流であったが、日本の大学生が中国にあまり来ないので、日本側はその不均衡が悩みの種である。日本の大学は年3~6万元と欧米に比べ学費が安いので、学費が必要だとしても留学を希望する学生は一定数いるだろう。学生の希望・意向を確認しながら、それに沿ったより良い留学先を確保するのも大学側の重要な課題といえる。そして学生はインターンや留学の期間を利用し、卒業後に日本へ行って直接就職する道を模索するのもよいだろう。
以上、日本語科の状況と対策について卑見を述べてみた。あくまでも私個人の経験に基づいて述べているので、必ずしも全て正しいとは限らない。皆さんの批正を請いたい。(浙江工商大学東方語言文化学院副教授 久保輝幸)
「人民網日本語版」2019年1月22日
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