【第128回】中国の作家によるアップル提訴から見るネットワーク権利侵害審理
中国大百科全書出版社有限公司がいかなる出版業者にも作品販売の授権を行っていないにもかかわらず、米アップル社が運営するApp Storeにおいて中国大百科全書が有料でダウンロードできることが発覚した。このため2012年2月、当該公司は、アップルの権利侵害停止と損害賠償を求めて、北京市第二中級人民法院に提訴し、同年9月、裁判所はアップルの権利侵害は成立するとして、約600万円の賠償を認める判決を下した。この他にも一部の作家がアップルを相手取り訴訟しているが、当該事案はこの種のアップルを巡る事案で最も早く受理され、そして最も早く出された判決である。現在二審係争中であるが、中国におけるネット上権利侵害の基本審理傾向について紹介していく。
一、アップル製品とApp Storeの関係
App Storeとはアップル社が運営するアプリケーションダウンロードサービスを提供するソフトウェアであり、App Storeのソフトウェア所有権利者はルクセンブルグに登記するアップル全出資子会社のiTunes株式会社である。このためアップル側は、App Storeはアップルが経営しているわけではないため権利侵害行為とアップルは無関係であるという抗弁に終始していたが、App Storeのプラットフォームの使用は決してアプリ開発者に無料で提供されているわけではなくアップルの収益の3割を占めていることはアップル自身が認めている。
二、アップルの審査義務の有無について
アップル側は、App Storeは一つの独立した運営会社であり、毎日膨大な量のソフトウェアのアップロードと審査を行っており、アップルにはこれらの内容の権利侵害有無を審査する義務はないと終始主張した。しかし、裁判所は、現有の証拠に基づき、アプリプログラムのアップロード過程において、App Storeシステムには版権証明提示の要求がないと認定した。アップルは版権紛争の指摘を受けた後、海賊版開発者のアプリの停止を要求できるようにしたが、開発者の資格には影響はなく、一定の期間が過ぎたら、開発者は依然継続して本来のアカウントを使用して海賊版をアップロードし続けることができ、アップルは開発者を告訴することなく、つまり開発者に対し経済損失を与えず、開発者の版権の権利侵害行為の継続を奨励しているに等しいと言え、アップルには一種故意に放任する態度が見て取れると言える。法的に言えば、アップルには間接権利侵害があり、開発者には直接権利侵害がある。「情報ネットワーク伝達権保護条例」第23条にある、 “リンクする作品、演技、録音録画作品の権利侵害を知っているもしくは知り得る場合、共同で権利侵害責任を負う”の要件をアップルは構成することになる。実は、アップル側に仮に海賊版の通報する構造があっても、共同で権利侵害責任を負うという法律結果が変えない。
三、セーフハーバールールの適用