【第120回】ストライキ(予防論)
今回は、予防の視点から、ストライキを考えていきたいと思います。予防を考える場合、ストライキ発生の要因を理解しなければなりません。経済発展による格差問題、経営側の絶対優位性と労働者の労働者権益意識の高まりによる衝突、激しい従業員の流動、希薄な会社への帰属意識、関連法規定の欠如、法律と実務との乖離などのマクロ的な要因のほか、中日両国の文化的差異の下での日本人管理者と従業員とのコミュニケーション問題、歴史問題に起因する中日両国の民族感情問題といったことも、日系現地法人の労務管理のアキレス腱として存在しています。
一方、ストライキ発生のミクロ的な要因においては、賃上げ要求と過去分残業代の精算などの経済的原因、過酷な労働環境への反抗、経営権の奪い合い、仕事上のミスを犯した従業員への人身権益の侵害によるものなどの要因が挙げられます。
これら要因から、ストライキ事件を未然に防止するために、以下のようなポイントについて、常にチェックを入れる必要があります。
1.労務管理の合法性による未然防止
労務管理におけるコンプライアンスを徹底化させることは、ストライキの予防論の基本原則となります。
この中で、中国の労務管理法規の動きを把握し、前後一貫した労務管理制度を完備、執行させ、個別、些細な労働紛争に留意しなければなりません。
2.経営管理の合理性による未然防止
(1)公平な評価システム、給与システム、昇進システムなどの魅力ある人事システムの構築が必要不可欠であると考えます。
(2)万が一、ストライキが発生した際の本社と現場間の役割分担、並びにそのマニュアルを作成する必要があります。そして、現地の最新の政治・社会状況も織り込みながら、定期的に見直すことも必要です。
(3)地方政府との強力なコネを持ち、企業の基本情報を熟知、かつ情報源となる企業内部協力者(例:地方政府の退官者である社内顧問)を事前に選定しなければなりません。