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携帯電話をめぐる論説:「問題は夢中になり過ぎること」

 先日、広東省肇慶市の中心部にある交差点で調べたところ、15分間の間に携帯電話を操作していた「うつむき族」は4人いた。「うつむき族」の男女は、信号待ちの間に携帯をいじり始め、信号が青に変わっても、携帯から眼を離さずに横断歩道を渡り、周りの車に全く注意せず、危険と隣り合わせという自覚は皆無だった。また、信号待ちの間、うつむいて携帯をいじり、微博(ウェイボー・ミニブログ)でつぶやく、または通話するドライバーも少なくなかった。鄭州晩報が伝えた。

 現代中国文学を代表する作家の一人である劉震雲氏は、「携帯電話にも命があり、それを使う人を操っていると、私には感じられる」と述べた。スマートフォンの登場によって、劉氏のこの言葉がいっそう真実味を帯びるようになった。道路で、食卓で、さらにはトイレの中で、携帯電話でニュースを読み、ゲームで遊び、「微信(チャットアプリ)」を楽しむ人がますます増えている。携帯電話で遊ぶことを無上の楽しみとし、絶対に離れられない人がますます増えている。空いた時間が1秒でもあれば、携帯電話を「すかさず」利用する「携帯依存(原語:手機控)」族は、携帯で遊びの限りを尽くしている。

 だが、快楽と同時に、危険も隣り合わせにある。たびたび報じられる交通事故のほか、4月の「新安晩報」では、高速道路で運転していたある男性が、うつむいて携帯のショート・メッセージを読むことに夢中になり、事故を起こしたと報じられた。成都のメディアが10月に同地で発生した交通事故を取りまとめた結果、運転手の携帯電話の使用が原因で起こった交通事故は10件と、全体の2割を占めた。サーチエンジン「百度」で「手機控」や「交通事故」というキーワードを入力して検索すると、ヒットする事故の例は枚挙にいとまがない。

 スマートフォンは、さまざまな未知の体験を人々にもたらした。しかし同時に、それによって人々が受ける制約も少なくない。交通事故以外にも、「携帯依存症」の人々は、断片化された情報に縛られ、苦境に陥ることになる。本来は豊かで多彩だったはずのプライベート生活が、スマートフォンの登場によって、無気力で感情の乏しいものに成り果てた。以前は、空いた時間をゆったりと過ごす人がほとんどだった。例えば、一冊の本を片手に、静かに読書を楽しんだものだ。しかし、「ネットメディア」時代の今では、ヘンリー・ソロー著「ウォールデン・森の生活」のような体験は、スティーブ・ジョブス式の「情報の断片収集と娯楽」に取って代わられた。

 「携帯電話をコントロールする」のか、それとも「携帯にコントロールされる」のか?これはひとつの大きな問題であり、自分で解決することが非常に難しく、さらには他者との関係が疎遠になる恐れもある。以前のメディア報道によると、家族が集まったとき、老人は若い人とあれこれ話をしたいと思っているのに、若者は携帯をいじってばかりでまともに話をせず、ついには老人が怒ってしまい、その場を後にしたという。

 従って、問題は携帯電話を使うことではなく、携帯電話に夢中になりすぎることなのだ。道を歩く時は、道を歩く行為に、食事をする時は食事という行為に、人と集まる時は人との交流に、それぞれ専念すべきである。携帯電話の画面に注目するのではなく、現実社会に注意を向けなければならない。携帯電話にエネルギーを注ぐのではなく、現実の仕事に力を注ぐべきだ。様々な活動のために時間を有効活用すべきで、携帯電話を使うことに多くの時間を割くべきではない。生活の大半を携帯電話に捧げることをきっぱりと拒否することで初めて、携帯電話を生活に効果的に取り入れ、ITが我々にもたらす利益や喜びを真に享受することが可能となる。

 米国人は、映画の中で生活哲学を表現することが得意だ。ハリウッドのSF大作映画「アイ、ロボット」には、恐ろしい未来予想図が描かれている。物語の舞台は2035年、地球上の人々は15人に一人の割合でロボットを保有しており、生産、設計、さらには日常生活のすべてがロボットの手で行われている。しかし、そんなある日、ロボットが反逆を起こし、人類を支配しようと企てる。人類はロボットの付属物となり、自主独立能力を失ってしまう。この映画は、確かにやや大げさではあるが、「科学技術を利用するか、それとも科学技術に使われるか」という根本的な命題を提起しており、現実社会に対する奥深い洞察力を秘めている。(編集KM)

 「人民網日本語版」2013年11月15日

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