英国の国立数学教育団体NationaI Centre for Excellence in the Teaching of Mathematics(NCETM)が最近実施した調査の結果、英国の成人が数学を苦手としているために、英国政府が受ける直接的・間接的な経済損失は年間200億英ポンド(約33億8240万円)に上ることが明らかになった。英国教育大臣は2月、上海を訪れ、「救援」を要請。これにより、上海の数学教員60人が英国に赴き、英国人に数学を教えることになった。BBC(英国放送協会)が12日付で報じた。
○英国人、日常生活の各シーンで問題噴出
英国の成人のうち、計算を行う時に、手元に電卓がなければ、指を使って計算する人が3分の1を占める。また、買物の際に、特売商品の割引率や計算にうといことから、毎週10英ポンド(約1690円)を損している。商店のレジでお釣りを受け取った時にお釣りが不足していることに気づかないため、総額8億ポンド(約1353億円)以上のお釣りを「もらわずじまい」になっている。
NCETMは、「数学的な能力が低いことから、本人の給与レベルが下がり、企業の利益が減り、政府の税収が落ち込み、英国政府は年間200億ポンドの経済的損失を被っている。この額はGDPの1.3%に相当する。刑事司法体制や国家医療サービス体制にもたらされる損失は数値化が難しいため、この数値は、実際の損失額よりも少ないと見られる」としている。
○数学能力の低さをもたらした三大要因
英国人がこれほど数学を苦手とする原因として、以下3点が挙げられる。
1 学校で算数を学び始めた時から、電卓に依存しすぎている。英国政府はかつて、10歳から12歳の学生を対象とした数学テストを実施した。電卓を使わないことを条件としたこのテストでは、「2.36+1.49=」の計算問題を解けない学生が27%を占めた。また、「415-5=」ができなかった学生も36%いた。
2 英国人は総じて、数学に対して興味を抱いておらず、数学を重視していない。調査によると、学生の25%は、「数学を勉強したくない」と答えた。その理由として、「勉強してもよくわからない(31%)」、「数学の勉強は退屈極まりない(45%)」などが挙がった。
3 数学担当教員の力量が不足しており、国内の小学校教員で数学の学位を持っている教員は僅か3%にとどまっている。