ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産センターのキショール・ラオセンター長は27日、河北省石家荘洞溝村に「偽スフィンクス」が建造された事件について、エジプト政府から正式な苦情は受理していないことを明らかにした。新華社が報じた。
ラオ氏は、黄山で開催された「ユネスコ遺産と持続可能な発展をめぐる対話会」の席上で、「私の知る限り、ユネスコは今のところ、エジプト政府から正式な苦情は受け取っていない。この事件に関する情報は、すべてメディアを通じて知った」と述べた。
駐エジプト新華社記者によると、エジプト政府はすでに、中国が「偽スフィンクス」を建造したことについての苦情をユネスコに提出する準備を進めているという。エジプト文化財担当局長はこのほど声明を発表し、「1972年にユネスコ総会で採択された世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)の条約批准国は、故意であるなしに関わらず、いかなる文化遺産や自然遺産をも損なわないことに同意している。この条項に基づき、エジプトは中国に条約を遵守するよう訴える」と表明した。
ラオ氏は、「自国の文化遺産を保護するためのエジプト政府の対応は、十分理解できるものだ。エジプトから正式な苦情を受理すれば、ユネスコは書面で中国当局に通知し、中国側の意見を求める。その後、両国が協議を通じて友好的な解決に至るよう調整を図る」と述べた。
ラオ氏はさらに、「本物は本物で、偽物は偽物。この点は誰もが理解するところだ。この事件が大問題に発展していくとは認識していない」と続けた。
この「偽スフィンクス」は、長さ約80メートル、高さ約30メートル、石家荘市西郊外の山前大道洞溝村にあるテーマパークに建造された。テーマパークの担当者は25日、「このスフィンクス像は、撮影用に一時的に建造されたもので、撮影が終わればただちに取り壊す予定だ。誤解を招いたことについてはお詫び申し上げる」とコメントした。
世界遺産の偽物が中国に数多く建造されていることについて、ラオ氏は、「ユネスコ世界遺産条約には、世界遺産所在国主権および遺産自体の保護に関する内容も盛り込まれているが、偽物の建造を防ぐための具体的な規定は定められていない」と指摘した。(編集KM)
「人民網日本語版」2014年5月29日